「午後3以降のうたた寝はダメ」「寝られない人は“夜活”を」 認知症を予防する快眠術

ドクター新潮 ライフ

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高齢者がうたた寝してしまう理由

 快眠のためには絶対に避けなければならない午後3時以降のうたた寝――。では、どうして高齢者はうたた寝してしまうのでしょうか。それは端的に言うと、「暇」だからです。

 夕食を取り、満腹感を得て眠気が強まってくる。特にすることもないし、子どもは巣立ち、さらに亡くなるなどして伴侶もいなければ、話す相手もいないので、テレビくらいしか時間をつぶす手がない。

 しかし、この高齢者の“友”であるテレビがいま、とてもつまらない。還暦を過ぎた私が実感していることですが、タレントがひな壇に並ぶようなバラエティー番組が多く、高齢者が観て面白いと思えるものが極端に少ない。すると、テレビをつけっ放しにしたままうたた寝をしてしまう……。「高齢不眠症患者」の出来上がりです。

 こうした事態を避けるために、私は高齢者に「夜活(よるかつ)」をお勧めしています。夕食後、寝るまでの間に家族だんらんの時を過ごせればそれに越したことはありませんし、おひとりさまでも、例えば夜ご飯を済ませた後に近所のスーパーに行って割引きになった肉や魚を買い、翌日の食卓の準備をするといった具合に、夜に「イベント」を入れてうたた寝を防ぐことが重要です。

“負の連鎖”

 高齢者の中には、日中に施設に通い、文字通り「デイケアサービス」を利用している方もいるでしょう。しかし、昼にデイケアに行って疲れ、夕食を済ませてうたた寝してしまうというパターンに陥りやすいので、睡眠専門医の立場からは、「ナイトケアサービス」の環境が整うといいと思っているのですが……。

 いずれにしても、高齢者にとっては夜活をすることが、「うたた寝→不眠→認知症」という“負の連鎖”を断つためにとても大切です。

 さて、冒頭で不眠症を訴える患者さんのケースを紹介しましたが、眠れずに切羽詰まった患者さんの中にはこう訴えてくる方もいます。

「先生、とにかくしんどいので、今夜から眠れるようにしてください」

 そうした患者さんには、残念ながらこう言うことしかできません。

「今夜からは無理です。明日の朝からの行動であれば助言しますよ」

 ここまで説明してきたように、夜に眠れない原因は「それ以前の時間帯」にあります。ですから、しっかりと朝起きて、場合によっては昼寝をし、決してうたた寝せず、夜はすぐ寝ついて朝に目が覚めるという“正のサイクル”を作り出す必要がある。それを実現するには、「夜から」ではなく「朝から」でないと無理なのです。

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