「午後3以降のうたた寝はダメ」「寝られない人は“夜活”を」 認知症を予防する快眠術

ドクター新潮 ライフ

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昼と夜の境目は午後3時

 ここで問題です。「昼」と「夜」の境目は何時でしょうか? 睡眠専門医としての答えは、太陽が真上よりも水平線に近くなり始める午後3時ごろです。意外に早いと思われるかもしれません。しかし、睡眠には太陽の光が大きく関係していて、午後3時ごろから睡眠ホルモンといわれるメラトニンが分泌を始め、夜にそれがピークに達してスムーズに入眠できるように人間の体は作られているのです。

 このメカニズムによって、メラトニンの分泌が始まる午後3時ごろにいったん眠気が襲ってきます。とはいえ、ここで寝てしまうと、脳と体が「寝た」と勘違いしてしまい、夜の「本当の睡眠」に支障を来します。つまり、午後3時以降に「うたた寝」をせず、眠気のピークを夜、ベッドに入る直前に持ってくることが快眠の鍵なのです。

 英国には、午後3時前後のアフターヌーンティーという習慣がありますが、これはいったん眠気が襲ってくる時間帯にカフェインを摂取して覚醒を図ることができる、快眠のためにはとても理にかなった習慣といえます。

 なお、その時間帯以前の30分程度の「昼寝」は夜の睡眠を妨害しません。ですので、むしろ午前中の疲れを取ってリセットするためにも、体力が落ちて長時間睡眠が難しくなっている高齢者などに昼寝はお勧めです。

「脳内の掃除」が滞り……

 バリバリと仕事をしている方は、うたた寝しようにも時間的に難しいこともあり、現実的にうたた寝するのは高齢者が非常に多いといえます。そして、これが認知症を増やす大きな原因ともなっているのです。

 まず、脳内で作られるタンパク質の一種であるアミロイドβの蓄積が認知症の要因の一つといわれていますが、睡眠時にアミロイドβは脳外へ排出されます。そのため、昼夜逆転して睡眠が乱れている方は「脳内の掃除」が滞ってしまい、認知症になりやすいのです。

 また、徹夜して大学入試を受けたら頭が働かず、良い成績が出せないことは誰にでも理解できると思います。それと同じで、認知症の診断においても認知機能を計るテストが行われますので、昼夜逆転している人は当然、テストの結果が悪くなりがちです。この意味においても、睡眠の乱れは認知症(と診断される)患者さんを増やすといえるのです。

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