「午後3以降のうたた寝はダメ」「寝られない人は“夜活”を」 認知症を予防する快眠術

ドクター新潮 ライフ

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 食生活に気を配り、脳トレに励む。人生100年時代の大事な健康課題である認知症の予防に努めている人も多いに違いない。だが、何か抜け落ちてはいないか。ボケないための最善の手はそもそも“認知症に近寄らない”こと。それは快眠によってもたらされるという。

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「不眠症で眠れず、つらくて、つらくて。先生、何とかしてください!」

 私のクリニックを訪ねてくる患者さんの中には、切実にこう訴えてくる方がいます。

「夜9時にはベッドに入っているのに、寝られるのは12時くらいで……。不眠症になると本当にしんどくて堪(たま)らないです」

 気持ちはよく分かりますが、そんな患者さんに、私はあえてこう伝えることがあります。

「あなたは不眠症になったのではありません。あなた自身が不眠症を作り出しているんですよ」

 あたかも不眠症という病に“かかってしまった”かのように患者さんは説明します。しかし、実は患者さんが自ら不眠症に“かかりにいっている”ケースがあるのです。

〈と、衝撃的な話をするのは、日本睡眠学会専門医の中山明峰(めいほう)氏だ。米国南イリノイ大学に留学し、愛知医科大学睡眠障害センター副部長、名古屋市立大学睡眠医療センター部長などを歴任した中山医師は、「睡眠と認知症」などをテーマに、長年、臨床・研究を重ねてきた。

 そんな中山医師が、睡眠に関する“誤解”について続ける。〉

自ら不眠症に“かかりにいっている”

 床に入ってから30分以上、眠りに就くことができない方は「入眠困難」と呼ばれ、これは不眠症の中でも最も多い症状です。この定義からすると、確かに「夜9時から12時まで入眠できない」のであれば不眠症に該当します。

 しかし、なぜ入眠できないのかといえば眠くないからです。眠くないのにベッドに入っても眠れないのは当たり前のこと。先の患者さんのケースで考えると、午後11時30分以降にベッドに入れば、30分以内に眠りに就けるわけですから不眠症ではない。狐につままれたような思いになるかもしれませんが、これが、自ら不眠症に“かかりにいっている”ということの意味です。

 では、なぜ夜12時近くになるまで眠くならないのでしょうか。

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