1週間後に迫るトランプ関税の「Xデー」で米国株はさらに下落? それともチャンス? 米株専門家が今後の動きを予想

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今から投資家の取るべき行動とは?

 株式市場のバリュエーションには「トップダウン」と「ボトムアップ」の2種類があります。

 トップダウンとは、マクロ経済や市場環境の分析を重視し、その結果を元に市場全体の価値の分析を行う方法です。もう一方のボトムアップは、企業の財務状況や成長性、競争力などの個別要因に焦点を当て企業の価値を評価、その積み上げで市場全体の価値を測るものです。

 トップダウンによるS&P500の1年後の価値は6479となっており、現在の5638は15%割安であることを意味します。また、ボトムアップでみたS&P500の1年後のターゲットは6847ポイントです。現在の5638ポイントから21.4%のアップサイドを示唆しています。

 関税引き上げ懸念で個別銘柄の株価が下がったことで、現在のマーケット全体は2割ほど割安なレベルまで下がったということです。ボトムアップでS&P500が2割も割安なレベルに達したのは2023年10月末以来の非常にレアなケースです。

 加えて、米国株はこのような調整を何度も経験してきたという事実も指摘しておきたいと思います。1928年からの長い歴史を遡ると、S&P500は平均1年に3回は5%超えの下落を、1年に一回は10%を超える下落を経験しています。

 実際に過去5年間の推移を見てみると、10%程度の下げが4回、20%程度の調整は3回もありました。今回の株価下落は、米国発の関税戦争をきっかけとしたものですが、米国株がこのような下げを経験するのは長期的な視点では「日常」なのです。

 ですから、ここで投資家の皆さんには、今一度長期的な視点を持つことをお勧めしたいと思います。

 トランプ大統領の行っている手法はかなり乱暴に見えるものの、その最終的な目的はアメリカを経済的により強い国にすることです。トランプ大統領は記者からの質問に答える形でこうコメントしました。

「物事を進めるにあたっては“Easy Way”と“Hard Way”の二つがある」

 Easy Wayとは楽なやり方でありHard Wayとは厳しいとか、苦労してやるという意味です。

「今私がやっているのはHard Wayの方で、その方が、結果が20倍大きくなる」と。つまり、トランプ大統領はHard Wayの方が米国にとって長い目でベストな展開を期待できると信じているのです。

 先述の通り、関税騒ぎが一段落した後、トランプ大統領が再び経済政策の中心に据える可能性があるのは税率の引き下げです。関税政策による景気への影響が懸念されるなか、成長促進策として減税を行う見込みなのです。

 一方、現在のマーケットは依然として不透明感を抱えているものの、株価は歴史的に「懸念されるイベントの実際の発生前に底打ちする」という傾向があります。

 したがって、私は今年後半のS&P500は現在よりも高い水準で推移すると予想しており、今の株価下落局面は長期投資家にとっては「貴重な買いの機会」になると考えています。

 ウクライナ戦争の停戦の可能性についても、もし実現すればマーケットの不確定要因が一つ減ることになり、株式を含むリスク資産にとってポジティブな出来事となるでしょう。

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 関連記事では、同じくマネックス証券の岡元兵八郎氏が「2025年に米国株で狙うべき投資テーマ」について解説している。著名投資家であるキャシー・ウッド氏も注目する、「4つのイノベーション」とは――。

【著者の紹介】
岡元兵八郎(おかもと・へいはちろう)
マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup/米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888

デイリー新潮編集部

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