看護師が打ち明ける“転職しても経験が生かせる”のは「何科」? 激務を承知で「救命救急センター」を希望する人もいる医療従事者のリアル
世間やメディアによる勝手すぎる偏見
一方、こうした専門職においては毎度世間が勝手に抱く「偏見」も向けられる。なかでも看護師においては、なぜか「性的」な観点で見られがちだ。
先日、ある女性ファッション雑誌に掲載された「看護師の着回しコーディネイト企画」がTwitter(現「X」)などで炎上。編集部はウェブサイトなどで謝罪する事態となった。
当該企画は、「オペ看護師が主人公!スカートしばりの3月着回しDIARY」というタイトルで、看護師を主人公にしたストーリー仕立てで日々のコーディネイトを紹介する内容だったのだが、その設定が「看護師が医師との“ドロドロ病院内不倫”から卒業して新たな恋に踏み出す」という設定だったのだ。
そのページには、「え、まだ不倫してたんですか」、「医師と同期ナースがいちゃいちゃ」という文言のほか、焼き肉を食べに行った設定のシーンでは、「わ〜さっき焼いた内臓のにおい」、「ごめん!オペで肝臓に電気メスを使って…」という描写も。
言わずもがな、看護師は不倫をする人たちという事実は一切ない。また、焼肉店のにおいと電気メスを使用した際のにおいも全く違う。
今回の雑誌企画に対し、看護師や看護師経験者からは、
「女性を応援するはずの女性誌に『看護師は医師と不倫するもの』という偏見に満ちた、看護師を侮辱した内容や、『さっき焼いた内臓のにおい』という倫理観に欠けた描写など、非常に不愉快な気持ちになった」
などというような抗議の声が多く聞こえた。
今回、当該雑誌の編集部に看護師への取材や聞き取りをしたうえでの掲載だったのか、看護師に伝えたいことはあるかを問うたところ、「現場で働いていらっしゃる看護師の方々に、改めて心よりお詫び申し上げます。」と回答があったが、取材の有無に対しての回答はなかった。
看護師に限らず、今回のケースのように、特定の職業に対して業界部外者が勝手な解釈やイメージを付けることがよくある。そしてそれらはなぜか「性的」なものが多い。
こうした偏見は、現場の士気を下げるだけでなく、直接的な業務にも大きな影響を与えることがある。現場を他業界が描写する際は、細心の配慮とリスペクトと詳細な聞き取りが必要だと強く思うのだ。
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