看護師が打ち明ける“転職しても経験が生かせる”のは「何科」? 激務を承知で「救命救急センター」を希望する人もいる医療従事者のリアル
コロナ禍の看護師
本連載で各職業の人たちに取材する際、できるかぎり聞いているのが「コロナ禍の現場」なのだが、まさしく看護師は、当時第一線で闘ってきた人たちだ。その声は非常に重い。
「見舞いが禁じられていた当時、すさまじいスピードで病状が悪化していくなか、モニター越しに家族の顔を数度しか見られず亡くなった患者さんの姿は、今思い出しても辛い。家族ではない私が患者さんの隣にいることに、罪悪感すら覚えました」
「不安定な勤務体系のせいで元々看護師は睡眠障害を抱えている人が多いのですが、私もコロナ禍で睡眠導入剤を飲むように。コロナ禍では、体はもちろんですが、私はむしろ心のほうが辛かったです」
「コロナ禍で、使い捨てられるのはマスクだけじゃなかった。私たち看護師もマスクと同じ扱いを受けたと感じています。当時、家族に感染させないためにホテルと病院を往復していて本当に心身疲弊してました。そんななか、東京オリンピックで組織委が日本看護協会に対し、競技会場などで従事する看護師を500人派遣するよう要請。『看護師なんて掃いて捨てるほどいる』と思われていると感じました」
こうした過酷な労働環境に伴い、2021、2022年度の看護師の離職率は、正規雇用11.8%、新卒10.2%、既卒16.6%と高水準となった。新卒の離職者が10%を超えたのは初めてのことだという。
慢性的な人手不足のなか、患者数の激増に離職者の増加で、現場の業務はどんどん回らなくなる。そして何より物理的にも心的にも現場の痛手だったのが、看護師たち自身の感染だ。実際、看護師の集団感染が各地で起き、入院患者の受け入れを中断したケースもあった。
「他の科の入院病棟を閉鎖してコロナ専門病棟に人手を集めたこともありました。ベッドは空いているのに人が足らず、結果的にフルで稼働できない状態。今だから言えますが、感染して戦線離脱した同僚を恨みさえした。本当に生き地獄でした」
女性が多い現場で働く男性看護師の本音
看護師の現場は体力や精神力を酷使することが多い。一般的に、こうした過酷な労働現場には男性従事者のほうが多い傾向があるが、看護師の場合、男性の割合はわずか10%程度だ。
患者には当然、男性も女性も両方いる。男女両方の看護師がいたほうが患者への対応の幅も広がり、医療の質の向上にも繋がることは誰もが想像できるところだ。
こうして2000年ごろから「女性=看護婦」、「男性=看護士」としていた呼称を「看護師」とするなどジェンダーバイアスを払しょくする動きが活発化。男性看護師の就業者数は少しずつ増えているという。
しかし、それでもまだまだ「女性社会」の現場。現役の男性看護師からは
「患者から男性というだけで『医師』に間違えられる。高齢の患者からは『男のくせに女の仕事してるのか』と言われる」
「女性患者への対応のなかには体を拭くなど躊躇するものもあるが、女性が多い職場だとそういう男性従事者の気持ちを共有したり汲み取ったりしてもらえない」
「世間では男性による女性へのセクハラが問題視されてきていますが、看護の現場では女性からの偏見やセクハラも多い」
といった声が聞こえてくる。
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