看護師が打ち明ける“転職しても経験が生かせる”のは「何科」? 激務を承知で「救命救急センター」を希望する人もいる医療従事者のリアル

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 業種に関わらず、慢性的な働き手不足に陥っている日本。なかでも「生活インフラ」を支える仕事に従事する人たちの人手不足は、我々の生活そのものに悪影響を及ぼす懸念もある。医療従事者はその筆頭だ。人の誕生から最期までに寄り添い、我々の日常の健康を支える人たち。

 今回はその医療従事者の中から「看護師」の仕事を紹介していこう。

看護師の現在

「看護師」と名のつく職業には「看護師」と「准看護師」の2種類がある。どちらも患者たちのケアを行う仕事ではあるが、免許や業務内容に違いがある。

 看護師は厚生労働大臣発行の免許を取得後、自らの判断で業務が行えるが、准看護師の免許は都道府県知事発行のもので、業務には医師・歯科医院・看護師の指示が必要になる。

 また、賃金構造統計調査によると、令和6年における看護師の数(一般労働者)は全国に約90万人で平均年齢は41.2歳。一方、准看護師の数(同)は約14万人で、平均年齢51.5歳となっている。

 准看護師は元々、戦後の医療従事者不足を解消するために一時的に設けられた資格だったこともあり、その数は減少しつつあるが、一方の看護師は年々増加傾向にある。しかし、近年の高齢化による看護師の需要増により、人手不足は年々深刻化している。

 団塊ジュニアが前期高齢者となり、65歳以上の高齢人口がピークとなる2040年には、医療従事者が96万人不足するとも言われている。

人気の病棟

 看護師が働く病院には、言わずもがな多くの病棟(科)があるが、看護師たちは、自分の希望の科に勤めることができるのだろうか。

 看護師経験者に話を聞いたところ、新卒で大学病院などに就職する際は、配属先の希望を第3希望まで出せることが多いようだが、必ずしもそれが叶うとは限らず、希望の科(病棟)や部署に配属されたとしても、異動になることもしばしばあるそうだ。

 一方、転職時においては、キャリアアップしたいという明確な動機や意思があることが多いため、本人の意向が尊重されやすくなるという。

 では、看護師に人気のある科はどこなのだろうか。

 今回、6名の看護師・経験者に話を聞いたところ、仕事に対して何を重点に置くかによってまちまちだという。

「他の科でも役立つ、看護師の基礎的なスキルが身に付くのは『循環器科』。もし将来、異動や転職をしても、そこで培った経験が大いに活きるので」

 労働時間の安定を求める看護師に人気なのは、整形外科やリハビリテーション科、精神科などだという。

「精神科は、外来の場合は完全予約制のケースが多く、突発的な業務や残業が少なめ」

「整形外科は比較的労働時間が安定しています。他の科と違い、病気の患者さんよりも怪我人が多いので、経過とともに症状が改善することがほとんど。リハビリも急性期を脱し、回復期に入った患者さん、比較的若い患者さんが多いので、看護師としての心的な負担も少ないです」

 一方、最近では過酷な労働環境だと知りながら、救命救急センターやICUを希望する人も少なくないそうだ。

「救命救急の現場を描いた医療系のドラマを観て看護師になった人が一定数いることも影響しているでしょう。しかし、新卒だと勉強しなければならないことが多すぎて、帰宅後もゆっくり休めず、病んでしまうことも。助けられない命もあるので、自分のメンタルを保つ大変さがある」

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