石破総理の「地方創生」は下手すれば「地方崩壊」に “岐阜のタワマン”に見るリスク

国内 社会

  • ブックマーク

地方創生を地方崩壊にしないために

 むろん、岐阜市だけの問題ではない。わかりやすい例として岐阜市を挙げたにすぎず、同様の問題は全国津々浦々で起きている。

 たとえば、昨年夏に三重県亀山市の亀山駅を訪れて驚いた。駅前には広大な駅前広場が開け、周辺には広くて真っ直ぐな「都市計画道路」が通っている。その真ん中に多目的施設のようなものがあり、さらにタワマンとは呼ばないかもしれないが、15階建ての高層マンションが建つ。それらは2022年秋に完成したばかりだとのことだった。

 ちなにみ、亀山市の人口は5万人に満たず、私が訪れた日も人が歩いていないため、ただ広すぎる空間に感じられた。むろん、人口は今後、減少する見込みで、20年後には現在の86%になると推計されている。この町は城下町で、また駅からほど近いところを旧東海道がとおる。だが、残念ながら伝統的なエリアには、空き地やいまにも倒壊しそうな空き家が目立つ。なぜ、既存の町を再生させずに身の丈に合わない都市をあらたにつくり、共倒れへの道を突き進むのか。

 人口減社会における地方の創生とは、既存のものを活かした、親密性が高い有機的な町づくり、地域づくりに尽きる。そのことを意識しないと、地方創生はそのまま地方衰退および崩壊へと進んでしまう。そのことをぜひ肝に銘じてほしいと思う。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。