4億台以上売れたウォークマン、音楽シーンに欠かせないシンセサイザー 世界を変えた日本の電子機器6選!

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カメラの「三悪」を解消

 2021年にオリンパスから映像事業を引き継いだOMデジタルソリューションズの執行役員兼COOである片岡摂哉さんは、「後発企業としての差別化」が重要だったと説明する。

「当時の日本の一眼レフカメラは、性能や機能が進化して、ものすごい勢いで輸出を伸ばしていました。競合他社に追随する形でオリンパスからも出そうということになったのですが、米谷は既にあるのと同じものは作りたくなかった。カメラを宇宙からバクテリアまで撮影できる道具と捉えていて、『撮りたい場所に常に持っていける』という携帯性こそが大切だと考えていました。先行他社に光学的な面での性能や機能で勝とうとするのではなく、『大きい、重たい、シャッター音がうるさい』というカメラの『三悪』を解消することを優先したのです。部品同士を一体化したり、部品の取り付け位置を変更したり、シャッター幕関連の素材を自社で開発したりして、機能や強度を維持しながら手になじむような設計にすることにより、ようやく完成にこぎ着けました」

 70年代の日本では、ニコン(日本光学)、キヤノン、ペンタックス(旭光学)、リコー、ミノルタをはじめ、世界に名を轟かせる多数のカメラメーカーが覇を競い合っていた。そうした中で、オリンパスは自社初の普及型一眼レフであるOM-1がヒットしたことにより、カメラ大手の一角に食い込むことができたという。

自販機の心臓部にも

 未来技術遺産の登録は、一般向けに市販される最終製品だけではなく、部品や素材、製造装置・設備、計器類、鉄道車両など多岐にわたる。そのユニークさが際立つ例として、2012年に登録された飲料用自動販売機の「コインメカニズム」が挙げられる。

 国内の自販機設置台数は全体で現在約400万台。その数や種類の豊富さから、外国人が訪日してまず驚くのが飲料を中心とする自販機だともいわれるほどだが、このコインメカニズムとは、硬貨の判別や釣り銭の払出を行う頭脳とも心臓部ともいえる硬貨選別機構を指す。登録機「E-9130」の製作年は1967年で、埼玉県に本社がある機器メーカー、日本コンラックスが開発した。同社マーケティング本部第3企画部部長の森島圭太さんが開発経緯を説明する。

「当社は輸入酒を卸す貿易会社が発祥ですが、1960年ごろ、アメリカのコカ・コーラが日本に自販機を置くという情報を聞きつけ、当時アメリカの機械メーカーが国内用に製造していた自販機を日本に導入すると決めたのです。アメリカのコイン選別機メーカーと技術提携し、主に日本の10円硬貨用に選別機を改造して、コカ・コーラの自販機向けに出荷し始めたのですが、微妙な調整が非常に難しく、不具合が続出したと聞いています。やはり技術提携ではなく、部品も含めて一から最適化したものを日本で作った方がいいということになり、65年に開発に着手しました。材質を変更してコストを下げて軽量化したり、磁石などを用いた機械式の金種判別の性能を上げたりして、67年、主部品を国産化したE-9130を完成させました。さらにその2年後には、同機の完全国産化を達成しています」

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