4億台以上売れたウォークマン、音楽シーンに欠かせないシンセサイザー 世界を変えた日本の電子機器6選!
社名から「計算機」を外さなかった理由
カシオは、創業一族の「樫尾4兄弟」(忠雄、俊雄、和雄、幸雄)が終戦直後に起業し、世界的企業に成長させたことで知られる。今ではG-SHOCKをはじめとするデジタル腕時計や電子楽器でなじみのあるブランドだが、なお「計算機」を社名に入れていることでも分かるように、電卓へのこだわりは強いという。
「うちも社名変更の話はありました。実は90年代初頭のバブル崩壊後のある株主総会で、代表取締役だった次男の樫尾俊雄に対し、『計算機という文字を社名から取らないのか』との質問が出たことがありました。それでも俊雄は『カシオのすべての製品には計算機が入っている』と言って、社名に残す考えを明確にしたのです。『計算機』というのは、この時は半導体のLSI(大規模集積回路)を指していたのですが」(渡邉さん)
カシオは「ミニ」の後も、数字の表示部分に液晶を使用した世界最薄のクレジットカード型電卓SL-800を83年に発売するなど、ライバルのシャープとしのぎを削りながら市場をリードし続けた。そうしたハイテク技術は、カシオの腕時計などの小型液晶、シャープのテレビの大型液晶へと受け継がれていった。
大衆向け小型カメラで一世を風靡
軽量小型、軽薄短小の日本のモノづくりを象徴する製品といえば、カメラも代表例だろう。特に高度成長期、余暇に鉄道や車で出かけるようになってからは、すっかり旅の必需品にもなった。
未来技術遺産には、デジタルカメラを含めて数多くの日本製カメラが登録されている。1972年発売のオリンパスのフィルム式一眼レフ「オリンパスOM-1」もその一つだ。登録は2020年で、発売当初は「M-1」の名称だったが、独ライツ社のカメラに同じM-1という機種があったため、間もなく「OM-1」に変更した経緯がある。設計に革新的な工夫を凝らし、ボディー単体の体積を当時の平均的な一眼レフカメラの3分の2程度に小型化して軽量化も図られた点が評価された。
オリンパスといえば1959年発売の「オリンパスペン」という大衆向け小型カメラで一世を風靡した。両機種で開発の中心を担ったのが、日本カメラ界の立志伝中の人物の一人で、後に同社常務となる故・米谷美久(まいたによしひさ)氏だ。「ペン」の成功を受け、ファインダーから見える像を写真として撮影される像と一致させるため構造上どうしても大きくて重くなる一眼レフに、新風を吹き込もうとした。
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