4億台以上売れたウォークマン、音楽シーンに欠かせないシンセサイザー 世界を変えた日本の電子機器6選!
ウォークマン誕生秘話
ソニーグループ広報部の岸貴展さんは、誕生秘話について次のように話す。
「70年代、当社製品には既に小型カセットテープレコーダーがあったのですが、それを創業者の井深は海外出張に持っていき、飛行機で音楽を聴いていました。その井深が、『録音はできなくてもいいから、再生だけでもっと小さく軽いものを作ってくれないか』とエンジニアに依頼したのです。それで開発されたのがTPS-L2でした。井深は非常に気に入り、出張で愛用するようになりました。このウォークマンの良さは、機能を普通は足していくところを、あえて引いていった点にあります。さっそく、もう一人の創業者の盛田に見せたところ、『これは絶対に売れるから、すぐに商品化しなさい』となって、市販化に踏み切ったのです」
戦後間もなくの時期、ソニー前身の東京通信工業を共に立ち上げた井深大と盛田昭夫といういわば“ツートップ”の意向によって生まれたウォークマン。同シリーズはその後もカセットテープからCD、MD方式、さらにMP3などの音楽ファイルで聴くポータブル・オーディオプレーヤーへと進化を遂げて生産、販売を続けており、これまでの販売台数は累計4億台以上に上る。
徹底した小型化、低価格化
高度成長期を経た70年代から80年代にかけては、ウォークマンのような小型軽量の日本の家電製品が世界を席巻していた。カシオ計算機が72年に発売した「カシオミニ」もその典型だろう。未来技術遺産への登録は2008年で、そろばんに代わる計算器具として電卓を一般家庭や個人に普及させた記念碑的製品と位置付けられている。テレビCMで盛んに流れた「答え一発、カシオミニ」のキャッチフレーズを覚えている人もいるはずだ。
電卓は既に国内メーカー各社が販売していたが、カシオミニは大幅に小さくして手の平サイズとし、価格も他社の同種製品の3分の1以下となる1万2800円に下げた。同社広報部の渡邉彰さんは説明する。
「当社は60年代初め、電磁石の原理で作動するリレー式計算機を製造し、販売を伸ばしていたのですが、同年代半ばにシャープさんがトランジスタを使った電子式の小型卓上計算機を発売してヒットさせたのです。それをうちでも出せないかということで、『誰にでも計算できる』という汎用性を念頭に、徹底した小型化、低価格化に挑んだ結果、カシオミニの開発に成功。これが空前の大ヒット商品になりました」
60年代から70年代にかけて国内外の市場では、カシオとシャープを軸とした日本の各メーカーによる熾烈(しれつ)な“電卓戦争”が繰り広げられた。実際、シャープが1964年に製作、完成した世界初のオール・トランジスタ電卓「CS-10A」も同じ2008年に「電子卓上計算機」分野の未来技術遺産に登録されている。
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