エース不在の「健大高崎」がセンバツ連覇へ好発進! 選手たちへの取材で分かった「強敵・明徳義塾」撃破の“勝因”とは

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「スタートについては、かなり練習してきたので嬉しい」

 攻撃面でもう一つ大きかったのが機動力だ。その象徴がトップバッターの石田だ。4回に先制した場面、ノーアウト一・二塁から送りバントを決めてチャンスを広げたが、その時の二塁走者だった石田のスタートはネット裏から見ていても、思わず声が出るほどの速さだった。

 さらに、小堀のショートゴロでも相手の守備が全くホームへ送球できないタイミングで駆け抜けている。試合後、この走塁について聞くと、石田は嬉しそうに、以下のように答えてくれた。

「足には自信があるんですけど、スタートについては、かなり練習してきたので、そこに触れてもらえてうれしいです。バッティング練習の時にも常に打球に対する判断というのを取り組んでやってきていました。相手投手の池崎さんはフィールディングも上手くて、送りバントの場面は、特にスタートが大事なので、しっかりできて良かった。ショートゴロの間にホームインした場面も、小堀さんがボールに食らいついていたので、絶対にゴロを打つだろうと思って集中していました」

 前出の生方部長も、石田の走塁は素晴らしかったと称えており、ショートゴロで本塁を迷わず突くことができたのも、選手同士の信頼関係が大きかったと話していた。持ち味である打線がなかなか力を発揮できなくても、こういった小技と足でしっかり得点できる。これは大きな強みだ。

 この日登板がなかったエースの石垣も、わき腹の痛みは既になく、8割程度まで回復しているという。万全ではないエースを温存したまま、強豪校相手に勝ち切ったことも“センバツ連覇”に向けて大きなプラス材料だといえる。プロ注目のエースがいなくても、総合力で頂点を狙える――。そんな可能性を感じさせる健大高崎の初戦の戦いぶりだった。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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