最終回「御上先生」で存在感が図抜けていた“生徒”の名前 「青少年の自死問題」を描いた意義

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不正入学に決着

 脚本はオリジナルだ。書いたのは劇作家で演出家の詩森ろば氏(62)。演劇界では社会問題をテーマにして緻密な構成の脚本を書く人として名高い。代表作に本土復帰前後の沖縄と日米核密約を描いた「OKINAWA1972」(2016年)などがあるが、ドラマは過去に2本しか書いていない。

 ドラマ界は漫画原作ばかりで、すっかり保守的になっている。新鮮な脚本家を起用し、チャレンジングな作品に挑んだ日曜劇場も讃えられるべきだろう。

 御上役の松坂はいつもながら巧み。第1回では鼻持ちならぬエリート臭を全身から漂わせ、生徒たちから総スカンを食らったが、回を追うごとに生徒に慕われる教師になっていった。松坂が優しさと温かさを前面に出した。変貌に違和感はなかった。

 御上の文科省の同期官僚で、政官界を巻き込む不正入試を共に暴く 槙野恭介を演じているのは岡田将生(35)。やはり、うまかった。御上と最初から共同戦線を張って、倭建命を名乗って隣徳学院高に怪文書を送り、揺さぶりを掛けていたのだが、前回第9回まで観る側に正体の確信を持たせなかった。

 生徒では富永蒼の存在が図抜けていた。扮しているのは蒔田彩珠(22)。是枝裕和監督(62)の秘蔵っ子で、「万引き家族」(2018年)などの映画に出演し、NHKの夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」(2023年)で主演も務めているから当然か。映画界の助演賞は既にほぼ総ナメにしている。

 富永はクラスで最も溌剌としていて、誰とでも明るく話す。だが、家庭内では孤独だった。障がいを持つ弟との関係が断絶し、両親との関係も気まずくなっていた。

 学校と家で異なる顔を持っていたという難役だったが、不自然さを抱かせなかった。どこか無理をしているという雰囲気を富永が時折漂わせていたからだろう。

 最終回ではクラス内の不正入学者・千木良遥(高石あかり)がクローズアップされる。千木良は心優しく、椎葉が困ったときには真っ先にサポートした。父親が政治家であることが第1回のクラス内の会話で分かっている。

 不正入学者の処遇とケアは難題中の難題だろうが、御上のもとで成長した生徒たちがまた自分たちで考え、解決させるに違いない。もちろん、千木良には御上が寄り添うだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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