最終回「御上先生」で存在感が図抜けていた“生徒”の名前 「青少年の自死問題」を描いた意義
自死問題を最重要視
TBS「日曜劇場 御上先生」(日曜午後9時)は1月スタートの連続ドラマの中でNo.1の視聴率を獲得し、評価も高い。最終回を迎えるこのドラマの成功の方程式を解く。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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構成は緻密でテーマは骨太だった。主人公・御上孝役の松坂桃李(36)をはじめ、出演陣は適材適所。「VIVANT」(2023年)のセカンド監督だった宮崎陽平氏(34)らによる演出も隙がなかった。
教育をテーマとする学園ドラマ。誰もが関心高いテーマであるはずなのだが、ドラマで描くのは簡単ではない。現実味を重視すると、地味になってしまう。おまけに学校の日常を描くから物語が平板になりがちだ。
だから日本テレビ「最高の教師」(2023年)は教師をタイムリープさせた。TBS「日曜劇場 下剋上球児」(同)は教師に教員免許を偽造させた。
「御上先生」の場合、御上を文部科学省から超進学校の隣徳学院高に派遣されたエリート官僚という設定にした。3年2組の担当にさせた。手法は異なるが、現実から離したという点では「最高の教師」「下剋上球児」と共通する。
さらに同校への不正入学に関するミステリーを底流に置き、エンターテインメント色を強めた。不正に関する舞台には文科省と政界も加え、スケール感をアップさせた。練り上げられた構成だった。
教育をテーマにしたこのドラマの中で、最重要視されたのは青少年の自死問題。御上の兄・宏太(新原泰佑)は高校生だった22年前、発達障がいの生徒の進級差別に抗議し、それを学校側が受け入れなかったため、校内で感電自死した。宏太のゴーストが第1回から繰り返し登場したことでも自死問題が最重要視されたことは分かる。
G7各国の中で10~19歳の死因の1位が自死なのは日本だけ(厚生労働省調べ)。深刻な社会問題なのだが、ドラマはほとんど題材にしない。新たな自死を招いてしまうことを避けることなどが理由とされている。2020年以降は1度も題材になっていない。それを敢然と描いたのだから、挑戦的だった。
宏太が亡くなったとき、御上は中学生だった。当時、御上は宏太に向かってある言葉を口にした。それを後悔し続けている。
「友達から言われたんだよ。『お前の兄さん、この頃おかしい』って」
中学生の御上は宏太の抗議活動に理解を示さなかった。悪気はなかったのだろうが、宏太は孤独を味わっただろう。
御上の母親・苑子(梅沢昌代)は宏太の死を悲嘆するあまり、我を見失ってしまい、御上と宏太の区別が付かなくなってしまった。
苑子は宏太を自死に追いやったのは自分だと思っている。苑子も抗議に無理解で、勉強に専念してほしいと懇願していた。宏太はますます孤独を感じたはずだ。
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