6年で東大合格者85人→52人 女子最難関「桜蔭」が下落トレンド 東大二次試験が“易化”で他校にチャンス広がる
入学者の多様性を求める
ただ、神奈川県の私立女子校である洗足学園(川崎市)が東大合格者数を昨年の15人から今年は28人とほぼ倍増させていることを考慮すると“女子校離れ“と一言で済ますことはできないだろう。そこで考えられるのは、桜蔭生の“東大離れ”説だ。東大志望より国公立大学の医学部、あるいは難関私大の医学部医学科志望者が増えたのではないか、という見方である。
データを調べると、2024年の国公立大医学部合格者数は47人(現役39人、東大理科三類の12人含む)で慶応大医は18人。今年は同じく39人(同30人)で慶応医17人という結果だった。
「この数字を見る限り、東大から国公立大の医学部や慶応医に流れたとは言い切れないですね。東大理三に少し届かない受験生は、東京科学大(旧東京医科歯科大)医学部医学科に志望先を変更するパターンが多いですが、昨年の合格者数は10人だったのに対し今年は3人。ここ5、6年の東大合格者の減少傾向だけを見て桜蔭がパワーダウンしていると決めつけるのは早計ですが、近年、中学受験で合格した桜蔭を蹴ってライバル校に進む生徒も目立ちます。実際に桜蔭卒業生で東大に進学した学生に話を聞くと『東大進学が当たり前の空気感があって、学校と東大進学専門予備校の鉄緑会で勉強の毎日でした』と少し後悔しているようでした」(前出の予備校関係者)
一方、このような見方とは別に東大の試験問題の変化を指摘する声もある。進学指導を担当する予備校講師の見方はこうだ。
「今年の東大二次試験の問題を見ると、昨年に比べ英語は分量が減り数学や理科もいくぶん易しくなっています。つまり、東大専門塾に通って東大二次試験対策用に難問ばかりを解くよりも、教科書を丹念に読み込み理解する標準的な対策の方が大切ということです」
確かに毎年、多くの受験生が開成や麻布を蹴って進学する聖光学院(横浜市)や、メタ認知力の向上に力を入れて東大合格者数を一気に増やした洗足学園(川崎市)などは、塾に頼らない教育方針で知られている。
「東大自身、入学者の多様性を求めているので今年はハードルを下げたのかもしれません。二次試験の難易度が下がったため、かえって競争が激化して他の学校の生徒にも東大合格のチャンスが広がり、ユニークかつ独特な教育方針で知られる聖光や帰国子女が多い洗足、渋渋(渋谷学園渋谷)が食い込んできたというわけです」(同)
東大をめぐる進学校の興亡。来年の東大合格者数ランキングはどうなるのだろうか。
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