「最近は60代や70代の方も“物忘れ”で来院」「スマホ依存で本物の認知症に」 専門家が警鐘を鳴らす「スマホ健康被害」

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脳が疲れて認知機能が低下

「スマホ認知症」とは奥村院長が名付けた造語で、スマホの使い過ぎで脳が疲れてしまい認知機能が低下する状態を指す。

「本当の認知症と違うのは、スマホの使い方や生活習慣を見直せば治ることです。依存症になると、トイレや風呂へ行くにもスマホを持ち歩くようになる。アナログ時代に比べ処理すべき情報量が圧倒的に多くなるので、結果として脳が疲弊する。そうした脳の疲れを取るのに一番効率がいいのは、絶対に睡眠なのです」

 長い歴史の中で、人間は大型動物など外敵から身を守るため、脳内物質オレキシンを働かせ、脳を覚醒させることで生き延びてきた。

「大半の人は昼間に一生懸命働いて覚醒状態にあるわけですが、その際に脳内ではオレキシンが大量に分泌されているんです。それが夜になると沈静化して睡眠に誘われるわけです」

「スマホ依存で本物の認知症に」

 しかし、スマホを長時間使うと、オレキシンが過剰分泌され、夜になっても満足に眠れなくなってしまう。

「本来、脳は睡眠中に昼間に得た情報を整理整頓してリフレッシュさせているのですが、同時に認知症の最大の原因となる『アミロイドβ』という毒素を分解しています。スマホ依存症になってキチンとした睡眠ができないと、本物の認知症になってしまうのです」

 そうした悪循環を断つために、奥村院長は日光浴や簡単なリズム体操を勧める。

「“イチ! ニッ! イチ! ニッ!”と心の中でつぶやきながら、規則正しく散歩やサイクリングをして体を動かす。台所で野菜を切る時につぶやいてもいい。太陽の光を浴びたり規則的に体を動かしたりすると、オレキシンの暴走を止める脳内物質セロトニンが分泌され、夜はぐっすり眠れます」

 スマホは酒やたばこと同じく依存性があることを肝に銘じて、上手に付き合うべしと警鐘を鳴らすのだ。

前編【「ドライアイで“瞬間的な失明”」「スマホ老眼で近くのものが見えないように」 スマホの健康被害について専門家に聞いた】では、スマホを習慣的に使用することによって起こる「スマホ老眼」「ドライアイによる“瞬間的な失明”」について、専門家に解説してもらった。

週刊新潮 2025年3月20日号掲載

特集「60~69歳の保有率は今や86% 60歳から学ぶ『スマホ』健康被害」より

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