「最近は60代や70代の方も“物忘れ”で来院」「スマホ依存で本物の認知症に」 専門家が警鐘を鳴らす「スマホ健康被害」
「スマホを使う際は、30分に1回ストレッチを」
そもそも筋肉に柔軟性がある若者なら、一日中スマホを使用した後でも、ある程度は背骨が元の状態に戻る。片や高齢者はといえば、すでに筋肉の柔軟性が失われて固まっているため、スマホ猫背が改善することは期待できないというのである。
いったいどうすればいいのか。清水院長に聞くと、
「スマホを使う際は、30分に1回はリセットして、伸びる運動と肩甲骨を動かすのが大事です。胸を張って肩甲骨周りの筋肉を縮めて、再び伸ばすという運動を10回前後くり返す。とにかく同じ姿勢のまま固まらないように動かすことが大切なのです」
スマホを使う際、お手本とすべき姿勢はあるのか。
「目線の高さにまでスマホを持ち上げて使うのがベストですが、それでは腕が疲れてしまって、習慣化することは難しいと思います。体の不調を訴えてくる70代から80代の患者さんたちに聞くと、ほとんどが仕事も運動もしないで一日中ずっとスマホを見ています。そこでスマホの使用時間を減らして、前述した30分に1回のリセット運動を実行してもらうと、背中の痛みが消えたと喜んでいただけたケースもあります」
「最近は60代や70代の方も“物忘れ”で来院」
リタイアしたシニア世代の方が、若者よりスマホに割ける時間は多い。コロナ禍で外出が制限されたことで、スマホの魅力に目覚めた人々もいるのではないか。
その中にはスマホに依存して、心身がむしばまれてしまった人が存在する。
「高齢者こそスマホの依存に対して真剣に取り組まないと、健康被害が大きくなると危惧しています」
そう話すのは、おくむらメモリークリニックの奥村歩院長である。
「ウチは物忘れ専門のクリニックですが、昔は80歳代の本物の認知症患者さんが多かった。ところが、最近は60代や70代の方もたくさん来るのです。例えば70代前半の患者さんは“先生、人の名前もモノの名前も、まったく出てきません”という。試しに米国の大統領とか日本の首相の名を聞いても、本当に思い出せないと言うのです」
検査すると、確かに認知症患者と同じ程度に脳の働きが低下していたという。
「しかし、その方は脳が萎縮しアルツハイマーを発症するほどの状況ではない。話を聞くと『スマホ認知症』が原因になっているのではないかと思ったのです」
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