「ドライアイで“瞬間的な失明”」「スマホ老眼で近くのものが見えないように」 スマホの健康被害について専門家に聞いた
“壮大な人体実験”
【全2回(前編/後編)の前編】
シニア世代にも欠かせぬ日常ツールとなったスマートフォン。それがもたらす深刻な健康被害を、あなたはどれだけご存じだろうか。加齢による体へのリスクを抱える中高年だからこそ、しっかり学んでおきたい「実態と対策」の最新知見をお届けしよう。
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日本で初めてスマホが発売されたのは、2008年のことだった。それから17年がたち、今や60代は9割近く、70代は半数以上がスマホを保有している。若者が易々と扱うイメージが強いスマホだが、80代でさえ3割近くがスマホを操る時代になったのである。
爆発的な普及で人類の歴史に残る発明品などともてはやされる一方、スマホのデメリットを指摘する声は絶えない。そこで最も気になるのは、日常的に使うことで生じる健康被害だろう。
まだ誕生から日が浅いため、人体へいかなる影響があるのかは、不確定の部分が多い。スマホを使う人間は、“壮大な人体実験”に参加していると言っても過言ではないのだ。
「スマホのブルーライトは、ほとんど目に影響はない」
例えば、スマホが普及して言われるようになったのが「ブルーライト」の弊害だ。画面から発する光が視力低下など目に悪影響を及ぼす――。そんな話を耳にした向きもあろうが、世界でいち早くスマホが普及した米国の最新研究では「健康リスクはない」との報告も上がっているという。
「パソコンやスマホから出ているブルーライトは、ごく微弱なモノなので、ほとんど目に影響はありません」
とは、眼科かじわらアイ・ケア・クリニックの梶原一人院長である。
「さまざまなメガネ店が、ブルーライトカットのメガネというのを新しく作り、それを売りたいがためのキャンペーンをやっていましたが、とんでもない話です。確かに紫外線ぐらい波長が短くなると良くないのですが、ブルーライトは青色として見えている光なわけです。波長が長く目に見える光には、青い方から赤までいろいろありますが、いずれも害はありません」
かつてちまたを騒がせたブルーライトでさえさまざまな見解があるのだ。
それならば、人体の他の部分への影響はどうなのか。体に気を使うシニア世代に向けて、スマホが招く健康被害の実態と対処法を徹底ガイドしてみよう。
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