異例のキャリアを歩む「元ヤクルトの左キラー」久古健太郎 大手コンサル勤務を経て「デジタル野球」に取り組む理由

国内 社会

  • ブックマーク

 プロ野球の開幕が迫っている。近年のNPBは急激に「投高打低」の傾向が強まっている。

「投手のレベルが格段に上がったのは、間違いなくデータ活用の影響があると思います」

 そのように語るのは、かつて東京ヤクルトスワローズの中継ぎ投手として活躍した久古健太郎氏(きゅうこ・けんたろう/38)だ。2018年にユニフォームを脱いだ久古氏は、大手コンサルティング企業のデロイトトーマツコンサルティング勤務を経て、現在はプロ野球のデータ分析システムなどを提供するテック企業のライブリッツ(株)に在籍し、プロジェクトチームのリーダーとして、システムの運営やアマチュア選手向けの「デジタル野球教室」の開催に力を注いでいる。久古氏は、なぜ野球にデジタル技術を導入しようとしているのか、話を伺った(全2回のうち第1回)。

指導者の言葉が理解できずに悩んだことも

「コンサル業界で培った経験を『野球にも活かせたらな……』という思いで、入社を決めました。これまでのキャリアを掛け合わせて、野球界に恩返し出来たらと思っています」

 昨冬には、最新のデジタル機材を用いて技術の向上を目指す「デジタル野球教室」を2度にわたって開催。青木宣親氏、五十嵐亮太氏らをゲストに迎え、野球に取り組む中学生を相手に指導を行った。

「球児の皆さんにプロ選手も使っている最新機材に触れていただくことで、『これまで以上に効果的なトレーニングに取り組んでもらえたら』という思いで、野球教室の立ち上げに至りました。実力の向上ももちろん大切ですが、ゆくゆくは指導者不足や、満足な練習環境が得られないといった昨今の社会問題の解決にも繋げられたらなと思っています」

 デジタル野球教室で使われる端末は、選手自身のパフォーマンスや改善点のポイントがピックアップされており、数値を一目見るだけで自身の状態がわかるような工夫が施されている。

「僕が子供の頃は球速くらいしか数値の指標がなく、自分の感覚や指導者の主観が入ったアドバイスを頼りに練習を続ける以外に方法がなかった。僕も過去には指導者の言葉が理解出来ずに悩んでしまったことがありました。でも、データという客観的な数値があることで、選手は目の前にある課題の解決がしやすくなりますし、指導者も的確な声掛けが出来る。双方が効果的なトレーニングに取り組めることが、何よりも魅力だと感じています」

次ページ:データは大切だが、駆け引きや心理は測れない

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。