ソフトバンクは大丈夫? 大金がドブに消えた「大型補強」で優勝を逃した球団の“共通点”を探る

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 3月28日にプロ野球の2025年シーズンが開幕する。13年ぶり日本一奪回を狙う巨人は、マルティネス、甲斐拓也、田中将大ら総額70億円超の大型補強で新シーズンに臨む。うまくハマればチームの躍進につながるが、失敗すれば「大金をドブに捨てた」と非難されるため、ある意味、「諸刃の剣」とも言える大型補強。過去にも必ずしもチームの勝利につながらなかった例は少なくない(金額はいずれも推定)。【久保田龍雄/ライター】

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“真の補強”とは、戦力のゴージャス化ではない

 3年ぶり日本一奪回を合言葉にしながら、あわや最下位の危機に陥ったのが、1997年の長嶋巨人である。

 同年の巨人は、前年“メーク・ミラクル”でリーグV達成も、日本シリーズでオリックスに敗れた雪辱を期して、FAで西武の4番・清原和博を獲得。さらに近鉄の主砲・石井浩郎、ロッテの左腕・ヒルマン、“台湾のイチロー”ルイスを相次いで入団させた。

 だが、日本ハムに移籍した落合博満の後釜を託された清原は、5月終了時点で打率.229、7本塁打と4番の役目をはたせず、6月6日の中日戦では応援ボイコットの屈辱を味わうなど、人気球団の重圧に苦しんだ。ルイスも打撃不振にエラー連発と攻守に精彩を欠き、6月に2軍落ち。2年総額5億円で契約したヒルマンに至っては、左肩の違和感を訴え、登板わずか2試合の0勝1敗とまったく戦力にならなかった。

 投打がかみ合わないチームは4月から8月まで5ヵ月連続で負け越し、5月以降最下位に低迷。終盤の巻き返しも時すでに遅し。4位でシーズンを終えた。

 高橋由伸監督時代の2017年も、FAで山口俊、森福允郎、陽岱綱を獲得する総額30億円の「トリプル補強」をはじめ、日本ハムの左腕・吉川光夫、元楽天のマギーらを入団させたが、山口が不祥事でシーズン終了まで出場停止になるなど、新戦力のほとんどが期待どおりに働けず、4位に終わっている。

 毎年のように大型補強を繰り返している巨人は、FAで工藤公康、江藤智を両獲りした2000年に日本一、ラミレス、グライシンガー、クルーンの助っ人トリオの活躍でリーグ優勝した2008年など結果を出したシーズンもあるが、それ以上に失敗例の印象が強いのも事実だ。“真の補強”とは、戦力のゴージャス化ではなく、チームの弱点をピンポイントで補えるかどうかであることを改めて痛感させられる。今季は“70億円補強”が奏功するかどうか、今後の成り行きを注目したい。

3年かけて浸透させた「機動力野球」が台無しに…

 大型補強で優勝を狙ったのに、開幕から負けつづけ、監督がシーズン途中で休養する事態となったのが、2015年のオリックスである。

 1996年の日本一を最後に優勝から遠ざかっていたオリックスは、2014年、ソフトバンクにゲーム差なしの2位と肉薄。あと一歩で栄冠に手が届くところまで躍進したことをビッグチャンスと考えた球団は、オフに球団史上最大規模の大型補強を行う。

 米国から日本球界復帰の中島裕之、FAの小谷野栄一、さらにはDeNAの4番・ブランコと、広島で二桁勝利2度のバリントンも入団させ、彼らの年俸総額は30億円といわれた。

 宮内義彦オーナーも「100点満点」と喜んだ補強は、強力打線が期待される一方で、森脇浩司監督が3年かけて浸透させた機動力野球への影響を懸念する声も出た。

 その不安は的中する。シーズン開幕後、ブランコ、中島、小谷野、ヘルマン、平野恵一が相次いで故障離脱。前年リーグトップのチーム防御率を記録した投手陣も、手術明けのエース・金子千尋が5月下旬まで復帰が遅れ、中継ぎの佐藤達也、岸田護、守護神・平野佳寿も故障と“野戦病院”状態に。

 開幕後の17試合で2勝14敗1分と大きく負け越すと、5月31日に早くも自力Vの可能性が消滅するなか、6月2日に森脇監督が休養を発表(8月に正式退任)。その後、福良淳一監督代行が指揮をとったが、シーズン終盤に楽天との直接対決に勝ち、0.5ゲーム差で最下位を免れるのが精一杯だった。

 補強が大失敗に終わったのは、フロント主導の補強が監督の目指す野球と方向性が違っていたことに加え、新戦力も生え抜きの主力も故障のリスクが高くなる30歳過ぎのベテランに偏っていたことが挙げられる。ネームバリューと過去の実績だけでは、優勝を“買う”ことはできなかった。

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