水2リットル59円に、かつ丼299円! 3800億円で西友を買収した「トライアル」の店内をのぞいてみると

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衣料にカー用品、長靴まで

 埼玉県のとある地方都市、駅から車で10分ほど走ると、そのスーパーは見えてくる。店内に足を踏み入れるとぎっしりと商品が並べられた棚。2リットル入りの天然水が59円、大きなかつ丼299円と、かなり安い。古ぼけた看板には「TRIAL」と書いてある。

 スーパーの西友を、ディスカウント大手「トライアルホールディングス」が子会社化すると発表したのは3月5日のこと。金額は3826億円。同じく西友を狙っていたイオングループやドン・キホーテに競り勝っての買収である。

 それにしてもトライアルなんて聞いたことがない東京都民も多いはず。同社は都内に1店舗もないのだ。どんな店なのだろうか。

 設立は1974年、福岡県福岡市に開業したリサイクルショップ「あさひ屋」がルーツだ。90年代に現会長の永田久男氏(68)が、ディスカウントに切り替えると米ウォルマートを手本に業績を伸ばしてきた。とはいっても、冒頭の埼玉県の店の様子はずいぶん違う。生鮮コーナーを抜けるといきなり衣料、そしてカー用品や長靴まで雑多に並んでいる。まるで、食品スーパーに無理矢理ホームセンターを足したみたいである。

“IT”に強み

 流通業界専門誌「激流」(国際商業出版)の編集長・加藤大樹氏によると、

「福岡はディスカウント王国ですが、その中でも競争力のある企業です。食品強化はこの数年の話。かつては安かろう悪かろうに近い評価でしたが、生鮮や総菜の質を上げたことで来店客が増え、いまの勢いにつながっていると思います」

 同社のもう一つの強みはITである。ソフトウェア開発で培ったノウハウをもとに、AIカメラで顧客の入店パターンの分析や在庫管理を行い、さらに“スマートショッピングカート”を導入。これは、客が商品をカートに入れると自動で判別。買い物の途中でもタブレットに合計金額が出てくる。買い物が終わり専用ゲートを通過すると、チャージしたお金から代金が引き落とされておしまいだ。

「こうしたデバイスはすべてトライアルの自社開発です。グループ内には小売りのためのAIを研究する『Retail AI』という子会社があり、米コロラド州立大学を出た永田会長の長男・洋幸氏(42)=トライアル取締役=が代表取締役CEOを務めています」(ライバル社の幹部)

 泥臭いディスカウント店の顔を持つ一方、最先端のIT企業でもあるトライアル。当面は「西友」の名前を残すとしているが、店構えと中身はガラリと変わるかもしれない。

週刊新潮 2025年3月20日号掲載

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