「財務省は行うべき減税すら議論の俎上に載せない」「老後の不安は増すばかり」 退職金増税について専門家が徹底解説

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「最低賃金には課税しない、という税制の基本理念を曲げてまで……」

 最終的に衆院を通過した案では、基礎控除額(48万円)と給与所得控除の最低保障額(55万円)をそれぞれ10万円ずつ上げる。その上、年収200万円以下の人は基礎控除にさらに37万円を上乗せする。また、25~26年の2年間の時限措置として、年収200万円超~850万円以下の人には30万~5万円を上乗せする。

 これをもって、税金がかかり始める「壁」は160万円まで引き上げられたが、これらの措置による減税額は多くの人にとって年2万円ほどに過ぎない。いかにも物足りないのだ。

「財務省は、減税額を最小化するため、国民の文化的な生活を保障するために最低賃金には課税しない、という税制の基本理念を曲げてまで、いびつな税制を考え出した、というのが実態です。国民から1円でも多く搾り取るために考え出された無理筋の、異形の税制と言えるでしょう」(藤井氏)

「減税すら議論の俎上に載せないのはどうなのか」

 元財務官僚で信州大学特任教授の山口真由氏の話。

「主要国を見ると物価上昇に伴って基礎控除を上げるのが主流ですし、私もそうすべきだと考えています。基礎控除引き上げについて政府はあそこまで渋るべきではありません。増税することばかり考えていて、理論的に行うべき減税すら議論の俎上(そじょう)に載せないのはどうかと思います」

 先月以来、財務省本庁舎前などで財務省の解体を求めるデモが起こっている。不満を訴える人々の声は、財務省に届いているだろうか。

 前編【「1円でも多くの税金を搾り取るのが財務省の『仕事』」 サラリーマンを追い詰める退職金増税の実態】では、退職金増税の中身と財務省の思惑などについて、専門家に聞いた。

週刊新潮 2025年3月13日号掲載

特集「サラリーマンを狙い撃ち 姑息な退職金増税を諦めない財務省の『嘘八百』」より

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