「財務省は行うべき減税すら議論の俎上に載せない」「老後の不安は増すばかり」 退職金増税について専門家が徹底解説

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「転職先にも退職金を引き継げるシステムを構築することのほうが効果的」

 本当に雇用の流動化を図るのであれば、

「控除額を調整するよりもむしろ転職先にも退職金を引き継げるシステムを構築することの方がよほど効果的でしょう」

 と、三木氏は言う。

「現状のシステムだと転職する度に退職金をもらい、その都度税金がかかり、もらえる額は少なくなってしまいます。転職先に退職金履歴を引き継いでいき、最後、職を辞める時に一括で税をかけて受け取るというシステムにした方がよほど雇用の流動化を実現できるのではないでしょうか」

「ご都合主義が過ぎる」

 退職金税制は2012年と21年の改革で、勤続5年以内の役員や従業員に対する「2分の1課税」が撤廃された。

「それが今になって『雇用の流動化』という理由で20年以上働く人からもしっかり税金を取ろうとしている。退職金は長年働いた報奨金という側面もあるのですから、急に20年以上働いた人からも取るというのはちょっとご都合主義が過ぎるのではないでしょうか。ただでさえ年金の額が下がっていく中、退職金の税負担まで増えるとなったら老後の不安は増すばかりですよ」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)

 こうした増税策とバランスを取る形で減税も実現するのであれば、まだ理解できる。しかし、国民民主党が訴えてきた「103万円の壁の引き上げ」は、年収別の基礎控除額が導入されるなどして「骨抜き」となった。

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