「大谷翔平」凱旋シリーズで収入「100億円」 MLBの巧みなマーケティング戦略に日本野球界が学ぶべきこと
日本の取り分
「ヘルメットのスポンサーは1枠5億円ほどだと推定しています。チケット、放送、グッズのライセンス料と合わせて、今回の東京シリーズでの収入は100億円はくだらないと思います」(小林氏)
これはアメリカ以外で開催した開幕戦で史上最高の売上だった昨年3月のソウルでの開幕シリーズの240%増の数字と報じられている。
一方で、日本への経済効果はあったのだろうか。
「インバウンドの効果はあまりないでしょうが、読売新聞、電通やグッズのメーカー、スポーツ用品店等々、関連産業にとっては特需となったでしょう。それと同時に人が動いて物も動けば経済は活性化されます」(小林氏)
球場で観客が着ていた背番号がついた公式ユニフォームですら1着2万8000円である。
「首都圏での特設会場を含め、日本全国を巻き込んだお祭りとなりましたから、グッズの売上は滞在した1週間で20億くらいは売り上げたと思います。そのうちMLBにはライセンス収入として12%が配分されますが、その分を差し引いても17億6000万円はメーカーや販売店、小売りに流れます。今大会のスポンサーになったセブン-イレブンが色々なキャンペーンをしていましたが、支払ったスポンサー料以上の効果があったようです」(小林氏)
とはいえ、アメリカのカモになっているようにも思われる。
「日本人がドジャース一色になっていることに、正直、寂しい気もしています。そうはいっても、野球は興行の世界ですから、これを機にNPB(日本野球機構)もMLBの手法を学ぶべきだと思います」(小林氏)
日本のプロ野球がメジャーから何を学べるのだろう。
試合時間と生ビール
「同じ野球とはいえ、試合展開を見てもずいぶん違うところがあります。例えば、MLBはピッチクロックや牽制球の制限もあり、ゲームの流れがスピーディーです。試合は2時間半ほどで終了します」(小林氏)
日本では終電が終わっても試合が続くことも稀にある。
「野球興行とは何かを見つめ直すいい機会です。もちろんNPBの関係者もMLBを見ていますからよく分かっているはずです」(小林氏)
なぜ変わらないのだろう。
「12球団のさまざまな思惑があって動かないんです。ピッチクロック一つとっても、試合時間が短くなると球場での飲食の売上が落ちるなどの理由でなかなか進みません。リーグが主導することなく、12球団の合議制ですから、結局、先送りという結論しか出てこないのです」(小林氏)
今回の東京シリーズでもチケットの転売が問題視された。
「今回、最も高価なチケットはダイヤモンドボックスの15万円。バックネット裏は6万円でしたが、それでも発売と同時に蒸発。ということは、もっと高い値段をつけても売れたはずです。読売新聞も後悔しているかもしれません」(小林氏)
庶民の娯楽がそんなに高価になっても困るが。
「MLBは、価格は需給で決まると考えます。ワールドシリーズのチケットは年々、上昇し、昨年は平均30万円になりましたが、それで売れるから、適正価格だという考えです。日本シリーズは平均1万円もいきません。日本はこの25年間、値段がずっと変わりませんでした。逆にアメリカは、この25年でチケットの価値を30倍に高めました。値段が上がることが正しいとは思いませんが、25年も変わらないというのはおかしい。巧みなマーケティングでファンの目を肥やし、野球の市場価値を高めてきたアメリカに学ぶべきところは多くあると思います。12球団でいがみ合っている場合ではないのです」(小林氏)
[2/2ページ]