「大谷翔平」凱旋シリーズで収入「100億円」 MLBの巧みなマーケティング戦略に日本野球界が学ぶべきこと
大いに盛り上がった「MLB東京シリーズ」。なにせロサンゼルス・ドジャースには大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、シカゴ・カブスには鈴木誠也、今永昇太と、5人もの日本人選手がいるのだ。試合が行われた東京ドームには、チケットを求めてファンが集結する騒ぎに。とはいえ、MLBが両チームの開幕戦を日本で開催した狙いは何だったのだろう。
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【実際の写真】ドジャースキャップ姿の美女に、「チケットを売って下さい」の紙を掲げる人も… 東京ドームに集結した熱いサポーターたち
「シンプルに言えば儲かるから。MLBは日本の野球市場を刈り取りに来たのです」
とは、桜美林大学教授でスポーツ経営学が専門の小林至氏だ。
「戦前から日米野球が開催され、戦後も1949年以降、ほぼ隔年で来日しており、MLBは、日本で野球が国民的人気を博していることはよく理解しています。日本をマーケットとして意識するようになったのは、1995年に野茂英雄さんが渡米したあたりでしょう。2000年に日本で初の開幕戦を実施し、2004年には、日本オフィスを開設し、2006年にWBCを開催など、徐々に、日本でのビジネスを拡大してきました。」
日本で初めてMLBの公式戦が行われたのは、2000年3月29日と30日に開催されたニューヨーク・メッツ対シカゴ・カブスの開幕戦だった。以来、04年にはニューヨーク・ヤンキース対タンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)、08年にはボストン・レッドソックス対オークランド・アスレチック、12年にはシアトル・マリナーズ対アスレチックス、19年にもマリナーズ対アスレチックスの開幕戦が行われている。
「プロスポーツにおける国際市場での最大の収入源は放送権料というのが定石ですが、日本はテレビの放送権料のマーケットが小さい。加えて、人口減の成熟社会ですから、MLBは日本を『顧客はたくさんいるものの思ったようなお金にならない』という認識だったと思います」(小林氏)
presented by Guggenheim
ちなみに、2000年のMLB開幕戦の正式名称は「am/pmメジャーリーグ開幕戦」で、冠スポンサーは日本企業。いかにも日本開催らしい。一方、今回の正式名称は「MLB東京シリーズbyグッゲンハイム(MLB Tokyo Series presented by Guggenheim)で、ドジャースの親会社グッゲンハイム・ベースボール・マネジメントが冠スポンサーだ。
「大谷翔平という、正真正銘のスーパースターの登場です。ペレ、マイケル・ジョーダン、タイガー・ウッズなど、その競技のファンでなくとも熱狂するスーパースターは “最強商品”なのです。ドジャースは昨年、日本から12社、100億を超えるスポンサー収入があったと推定されています。MLBも大谷関連で日本からの収入が100億円ほど増えたといわれています」(小林氏)
カブスのほうはどうだったのだろう。
「今回、MLBはカブスから2試合のホームゲームの興行権を買い取り、それを主催社である読売新聞社に売却、読売がチケットの販売などを手がけたわけです。カブスのチケット収入は1試合平均4億円くらいですが、今回は本拠地球場の売店や駐車場の売上補填なども含め、MLBがカブスに払った興行補償は2試合で15億円~20億円くらいだと思います」(小林氏)
MLBが読売新聞社へ売った興行権の額は40億円以上と推定される。15~20億円をカブスに支払っても、MLBは儲かるということか。
「MLBはメジャーの30球団と代理店契約を結んでおり、国際興行に関してはすべてMLBが統括する契約になっています。MLBとしては日本で開催することで新たなマーケティングもできますし、日本のスポンサー収入もありますから、ビジネスとしては異例の大きさになるわけです」(小林氏)
今回の開幕戦では国内外で22社ものスポンサーがついたと報じられている。
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