コンビニのトップに求められるのは「舌」だ 高給の経営者に庶民の味がわかるのか…セブンを築いた鈴木敏文氏の味覚

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「ジョブチューン」に思うところがある

 全体的には、コンビニの中食は進化を続けていると思う。ローソンのスイーツは専門店を凌駕するクオリティだし、ファミマのファミチキは若者から圧倒的な支持を受けている。セブンの店内調理のカレーパンはギネス記録を作るほど売れている。コンビニの中食が順調にステップアップしているのは間違いない。

 TBS系「ジョブチューン」で、コンビニの食品を有名なシェフや料理人が評価する企画が定期的に放送され、人気だ。だが筆者としては思うところもある。舌の肥えた顧客に向けて原材料費をふんだんにかけて作った料理と、コスト計算をしたうえで一般大衆が喜ぶ品質を保ち、しかも工場での大量生産を可能とするコンビニ食の開発とでは、求められるスキルが異なる。単純な比較はできないことを承知で、言葉を選ばずにいうが、後者の方が難しく、開発者にはより高度な技術や工夫が求められるのではないか。有名シェフや料理人が監修するコンビニの中食がほとんど定着せず、すぐに売り場から姿を消してしまっていることからも、それは一目瞭然の気がするのだが……。

 外食のデリバリーやテイクアウトが当たり前になった今だからこそ、コンビニの売上の基幹となる中食の進化にはますます期待をしたい。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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