韓国で何が起きているのか… 尹大統領の支持率が“驚異の回復”を見せている理由と、「内乱」の真実
二つの裁判の争点
弾劾裁判と刑事裁判の核心的争点は、戒厳令発動当時、尹大統領が国会に軍を投入して国会活動を阻止しようとしたかどうかだと考えています。
弾劾訴追人側と検察側は、尹大統領が軍幹部や高官に電話をかけ、国会議員の逮捕を命じ、国会での戒厳令解除案が可決されないよう指示したと主張しています。つまり尹大統領が国会の権限を侵害し内乱を起こしたとの立場を取っているのです。
これを裏付ける重要な証拠として、二人の証言があります。一つは前陸軍特殊戦司令官である郭種根(クァクジョングン)氏の証言、もう一つは前国家情報院第1次長の洪壮源(ホンジャンウォン)氏の証言です。
郭前司令官は12月10日の国会公聴会で、戒厳令発動時に尹大統領から直接電話を受け「国会のドアを壊して国会議員を引きずり出せ」との指示を受けたと語っていました。また彼の陳述を基に作成された、前国防相に対する検察の公訴状には「おのでドアを壊し、ガラス窓を割るよう大統領が指示した」という内容が含まれています。
しかし2月6日、憲法裁判所に証人として出廷した郭氏は、「『国会議員』ではなく『人員』(国会にいる人たち)だった」と証言を覆し、検察の公訴状にある「おの」という表現について「そのような発言をしたことはない」と否定、一貫性のない態度を示しました。
洪前次長は12月6日、国会公聴会で、戒厳令宣布直後に尹大統領から電話があり、「この機会に全部捕まえて、全部整理しろ」と指示されたと主張しました。洪氏は当時、呂寅兄(ヨインヒョン)前防諜司令官に電話をかけ、呂前司令官から李在明代表を含む複数の逮捕対象者の名簿を通知されたとも述べました。これを裏付ける証拠として呂前司令官との通話中に作成した「洪壮源メモ」を検察に提出しました。
一転して証言内容が変わり……
しかし、憲法裁判所での証言やマスコミ報道を通じて検察に提出されたメモは、洪氏本人が作成したものではなく、彼の補佐官が原本を見て書き写したものであることが明らかになりました。洪氏は初期には原本は破って捨てたと主張していましたが、2月20日、憲法裁判所に証人として2度目の出廷をした際に原本が実際に存在すると突如言い出し、それを公開しました。ただそれは、逮捕者名簿を含んでいるという主張がかすむほど、文字が落書きレベルで認識できず、内容が不明確なものだったのです。
また同月13日、憲法裁判所に出廷した趙太庸(チョテヨン)国情院長が、当補佐官に事実関係を確認するなどした結果、洪氏の証言と実際の状況が大きく異なることが明らかになりました。例えばCCTV(監視カメラ)の映像を確認した結果、メモを作成した時間と場所が洪氏の証言と全く一致しなかったのです。何より逮捕者名簿を読み上げたとされる呂前司令官でさえ、当該メモの内容を否定しています。
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