韓国で何が起きているのか… 尹大統領の支持率が“驚異の回復”を見せている理由と、「内乱」の真実

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法の原則に反する措置

 まず1月3日に行われた第2次準備期日では、弾劾訴追人側が弾劾訴追案から内乱罪の容疑を撤回しました。訴追人側は、12・3戒厳令が刑法上の内乱罪に該当しないことを認識したのか、弾劾裁判で憲法違反の有無のみを審理するよう要請したのです。そして憲法裁判所は、この要請を問題視することなく、承認しました。

 これは明らかに法の原則に反する措置です。弾劾訴追案は本来、その同一性を維持することが原則であり、訴追事実に重大な変更が加えられた場合はこれを却下するか、少なくとも国会に再議決を求めなければなりません。

 また、この撤回は事実上、昨年12月14日に国会を通過した大統領弾劾訴追案を無効化する結果をもたらします。なぜなら、弾劾訴追案は与党議員12人が野党側に加勢して辛うじて可決されましたが、彼らは内乱罪の疑惑が含まれていることを前提に賛成票を投じたからです。

 賛成に回った一部与党議員らは内乱罪が前提でなければ賛成しなかったと強く反発、「詐欺弾劾」とまで断じる声明を発表しました。

裁判の公正性への国民の疑念を深める形に

 さらに、憲法裁判所は自らの規定を破ることもちゅうちょしませんでした。憲法裁判所法第32条には、同一の裁判や捜査中の事件に関して関連記録の送付を要求することはできないと明記されています。しかし、憲法裁判所はこの規定を無視し、検察、警察などから捜査記録を入手しました。

 より深刻な問題は、憲法裁判所に出廷した証人の証言が検察の陳述と明らかに食い違っていたにもかかわらず、検察の調書を証拠として採用する決定を下した点です。

 また尹大統領側が申請した証人34人のうち、採用されたのはわずか9人でした。

 大統領の弾劾可否という重要な裁判にもかかわらず、憲法裁判所は3月中旬の判決を目標に速攻で押し進めたのです。

 これは朴槿恵(パククネ)元大統領の弾劾審判と鮮明な対照を成しています。朴元大統領の場合、合計17回の公判期日を経て、最終判決までに91日を要しました。一方、尹大統領の弾劾審判は、11回の裁判期日をもって急速に終結しました。

 一連の過程は、裁判の公正性への国民の疑念を一層深めています。果たして、このような状況下で大統領罷免を決定した場合、国民がそれを素直に受け入れるのか、大いに疑問が残ります。

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