「とにかく明るい中日」が話題も…「復活期待のベテラン組」と「未知数の新戦力」に大金を投じるチームの台所事情
「明るくなった」
本拠地・バンテリンドームナゴヤで行われた“新生・井上竜”の全体練習に、2人の育成選手が呼ばれた。昨秋の育成ドラフト1位・中村奈一輝(18)と、キューバから派遣されて2年目の外野手、カルロス・モニエル(23)だ。
【写真】こりゃ本物! 選手の活躍を心底喜ぶコーチの姿も…とにかく、中日が明るい!
「ファームで頑張っているとの報告もあり、『一軍体験』をかねての合流だと思われます。とはいえ、オープン戦終盤での一軍合流なので、開幕後、早い段階で支配下昇格があるかもしれません」(名古屋在住記者)
中村は対外試合で1試合の出場、それも代走での途中出場だ。モニエルも8打席に立っただけである。チーム関係者によれば、それでも練習中は一生懸命で「光るもの」があり、頑張りが報われての“一軍体験”だそうだ。こうしたファームでの選手情報が一軍の人事に直結するということは、チームの風通しが良くなった表れだろう。
「井上一樹監督(53)はあえてヘッドコーチを置きませんでした。自身が阪神でヘッドコーチを務めた際は、監督と各コーチ、ファームスタッフとの繋ぎ役を担ってきた。そのときの経験で『ヘッドを通さず、各コーチが監督に直接伝えたほうが良い』と感じたそうです」(チーム関係者)
今春キャンプのキャッチコピーは「PB」。ポジティブ・バトルの意味だが、新体制になってからよく耳にするのはチームが「明るくなった」の声だ。とはいっても、チームはまだ世代交代の過渡期であり、前政権からの課題でもあった二遊間のレギュラーも固定されていない。また、クローザーなどチームの要所を外国人選手に頼らなければならない不安定さも抱えている。
「中日は新守護神候補として、ジュニオル・マルテ(30)を獲得しました。一部では年俸1億5000万円とありますが、米メディア『べースボールFR』は125万ドル(約1億9000万円)での契約で、出来高は最高で20万ドル(約3000万円)と報じています。トレード情報に詳しい『MLBトレードルーマーズ』も、マルテはフィリーズに残っても76万ドルの最低年俸になる可能性があった、125万ドルでの中日行きを“チャンスを掴んだ”と伝えていました」(米国人ライター)
絶対的な存在だったライデル・マルティネス(28)を巨人に奪われ、守護神の補強は避けられなかった。米メディアの報道が正確だったとして、中日が「初年度に1億9000万円以上」を提示した外国人選手は、ここ20年間でマルテだけだ。そこで、現中日の年俸ランキングを調べてみると、1位は3億円の中田翔(35)で、2位はマルテ。3位は1億2000万円の大野雄大(36)と高橋宏斗(22)、5位は柳裕也(30)の1億1000万円、6位がカイル・マラー(27)の1億円だ。
中田、大野、柳は復活を目指している。「外国人選手は実際にプレーしてみないと分からない」というのがプロ野球界の定説だ。開幕投手に内定している高橋を除けば、中日は「復活」と「未知数」に大金を投じていることになる。チームが過渡期であることを象徴するようなランキングである。
守備争いも苛烈
「中田は20キロ近く減量し、キャンプに臨みました。これまでは『体重=パワー』の考えでしたが、近年はその110キロ近い体重が腰痛の一因ともなっていました」(前出・名古屋在住記者)
調整が順調だったからか、今季の中田に関しては好意的に見る声も多く聞かれた。3月16日時点でのオープン戦の打撃成績は18打数2安打。ベテランがスロースターターになりがちなのは仕方ないとしても、クリーンアップを予定して獲得したジェイソン・ボスラー(31)が故障で開幕戦に間に合わなくなり、長打力のある中田の存在感は増してきた。しかし、そんな中田への期待の一方で、新たな難題も浮上してきた。守備位置の重複である。
「石川昂弥(23)が一塁のレギュラーを獲るのではないかと思われましたが、三塁での出場機会も増えてきました。オープン戦後半に入ると、『一塁・中田、三塁・石川』でスターティングメンバーが組まれ、三塁には高橋周平(31)もいます。カリステ(33)や福永裕基(28)が一塁に入る日もあれば、一時期、外野手の細川成也(26)も一塁の練習をしていました」(前出・同)
二遊間のレギュラーも決まっていない。守備範囲の広さに定評のあった田中幹也(24)は左手有鉤骨鉤部を骨折してしまったので開幕には間に合わない。村松開人(24)、土田龍空(22)、板山祐太郎(30)、辻本倫太郎(23)、ロドリゲス(22)らがチャンスをもらったが、横一線で決め手に欠く状態だ。捕手も開幕は木下拓哉(33)がマスクを被ると思われるが、ルーキーの石伊雄太(24)を推す声もある。
「上林誠知(29)が長いスランプから脱出しそうです。ソフトバンク時代の18年に22本塁打を放ったころに戻りつつあり、外野のレギュラー争いに加わって来ました。リードオフマンの岡林勇希(23)がいて、4番が予定されている細川、ベテランの大島洋平(39)、ブライト健太(25)もいます。ボスラーもいずれは戻ってきます」(前出・関係者)
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