「強者男性イジリ」から早めに手を引いた指原莉乃の商才 いまや「おじさんタレント」こそが弱者に

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 かつてはバラエティー番組に引っ張りだこで、「おじさんタレント」たちへの毒舌でも人気を博した指原莉乃(32)。ここ最近はメディア露出が激減しているが、そこには彼女らしい策略が見て取れるという――。【冨士海ネコ/ライター】

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 弱者が強者にツッコむ、というバラエティーの演出は、昔から「スカッとする」フォーマットである。売れない芸人が大御所MCに。モテない女性芸人がモテる女子アナに。それは持たざる者である一般人の代わりに、調子に乗っていそうな芸能人に一太刀浴びせるというガス抜きの代理行為として成立するからだろう。

 そしてそのパターンで最も成功してきたのが、指原莉乃さんだったのではないだろうか。AKB48選抜総選挙で4回の1位を飾るも、「さしこのくせに~この番組はAKBとは全く関係ありません~」という番組名の通り、どこかメンバー内では軽んじられるキャラだった。ファンの男性と交際していたことも週刊文春に暴かれ、アイドルとしては落ちこぼれという印象がグループの内外でも一致していたように思う。神7と呼ばれた全盛期のメンバーたちと比べ、華やかさに欠ける容姿も本人は自覚していたようである。

 けれども、その「ヘタレキャラ」を逆手に取った指原さんの快進撃はすごかった。アイドルらしからぬ鬱屈ぶりは珍しがられ、バラエティー番組で引っ張りだこに。キラキラした女性タレントやアナウンサーを、女性芸人たちと一緒になってやっかむ姿は瞬く間にお茶の間の好感度もものにした。芋っぽいと言われていたルックスもずいぶん垢抜け、努力の人というポジティブなイメージを手にしたのではないだろうか。

 スキャンダルから大復活を遂げ、MCに抜てきされるようになっても、指原さんは自分より強者にかみつくという成功則を変えなかった。今度は自分より年上の「おじさん」タレントに矛先を変えたのである。例えば松本人志さんにフットボールアワー後藤輝基さん、有吉弘行さん、中居正広さんにウエンツ瑛士さんなど。芸能界では押しも押されもせぬ人気男性タレントたちが、指原さんに「そういうのっておじさんっぽくてカッコ悪いですよ」と冷たく言われて苦笑する画は、確かにバラエティー映えするものだった。

 しかし今や、その強者たちも多くが一線を退き、気付けば指原さんが最も強者というポジションに成り代わってしまった。もちろんそんなことに気付かない指原さんではなく、自身が影響力を持ち始めた頃からコスメやカラコンのプロデュース、後輩アイドルの育成など、「女性の味方」という新たな一面も打ち出している。ただ、今ほど女性のエンパワーメントを後押しする動きがそこかしこで顕在化する時代もなかったのではないか。指原さんがかみついてきた「おじさん」が、肩身の狭い「弱者」になっているという逆転現象が起きているのだ。強い言葉を言えば「パワハラ」とされる。経験や思い出を語れば「古い」と言われる。活発に動けば「老害」呼ばわり。もう身動き取れないと思っている「おじさん」は芸能界にも世間にも少なくない。

百害あって一利なし……「怒る」コンテンツの失速とタレントイメージの低下

 有吉さんやマツコ・デラックスさんを人気者に押し上げた「毒舌」ブームは、SNSの炎上が目につきはじめた頃から収束していった。指原さんと番組をやっている坂上忍さんの「バイキング」も終わったし、子どものゲーム機をバキバキにしたと得意げに語った高嶋ちさ子さんは炎上。指原さんの親友であるフワちゃんが活動休止になったのも、やす子さんに対する「死んでくださーい」という引用リポストが原因だった。

 炎上リスクに直面しながら番組出演するバラエティータレントたちにとって、発言を切り取られることは致命傷になり得る。だからこそ、誰かを「怒る」「けなす」ことがテーマの番組は、はっきり言ってメリットを感じづらいだろう。

 でも「上田と女が吠える夜」や「トークィーンズ」では、いまだに女性が男性をやり込めるような構図が残っている。かつては小気味よいやりとりに見えていたが、あまりにタジタジになっている男性を見るのもちょっとツラい。「上田と~」では鋭いツッコミが持ち味の上田さんも、相当気を使って発言しているのがうかがえる。

 強者であるはずのおじさんたちが弱り始めては、指原さんのような戦い方をする女性タレントは輝かない。いくら相手が売れっ子で調子づいているように見えても、やり過ぎては「キツいタレント」という印象が定着してしまう。

「ゼロイチ」MCに就任した際、「女性タレントとしての限界を感じている」と弱音を吐いたとされる指原さん。今春の改編期でレギュラー番組は3本となり、全盛期から大幅ダウンといわれているが、それも彼女の戦略のうちではないだろうか。指原さんのタレントイメージを必要以上に下げないための、戦略的撤退ではないかと思うのである。

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