「サカナクション山口」は熊本城ホールを絶賛、「山下達郎」は聖地・中野サンプラザの難しさを口に…“音楽ホール不足”より気になる“音響問題”とは

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人気ミュージシャンが絶賛

「SAKANAQUARIUM 2025“怪獣”」ツアー中のロックバンド、サカナクション。そのヴォーカリストでギタリストの山口一郎が、3月8日と9日にショーを行った熊本城ホールをXで絶賛したことが話題になった。

「音の反響が非常に少なくてデッドだ。普通の音楽ホールは、反響音で音楽を聴かせるように設計されているが、ここは真逆で、全くと言っていいほど音が反響しない」

 これはホールが個性的であることを賞賛しているコメントだろう。

「我々のようなバンドサウンドであったり、PA(マイク、アンプ、ミキサーなど音響機器)を必要とするミュージシャンとしては、音の分離や全体の音量を丁寧に調整できるし、演奏もしやすい」

「熊本でライヴを行う時は、サカナクションとしてはもうここしか考えられない」

 熊本城ホールの客席数は約2300。2019年12月に竣工した。あまたいるミュージシャンのなかでも、音響にはとくに意識が高いといわれる山下達郎がこけら落としのショーを行っている。

 今回の山口の発言で、いいホールとはどんな会場のことをいうのか――考えさせられた。

 いい音響でライヴを楽しむには、さまざまな条件があるだろう。壁や床や天井の材質のよさ、音のまわりがいい空間性、演奏者やシンガーの力量、音響スタッフの力量……。さらに客席の入りの具合も影響するという。満席の会場だと、お客さんの服が音を吸う。ガラガラだと空席の椅子が音をはね返す。同じ演奏でも客の入りによって、まったく違う音楽になる。

 熊本城ホールでのサカナクションのライヴは、さまざまな条件が高いレベルで整ったのかもしれない。演者とお客さん、両方にとって幸せなことだ。

ホール不足問題

 今、日本のエンタテインメントはホール不足に悩まされている。都市部はとくに深刻な状況。長い間、エンタテインメントシーンの舞台となってきた会場が老朽化などで次々とクローズしている。多くの人がその名を知る殿堂クラスばかりだ。

 東京及び東京近郊の主なホールでは、2023年4月からBunkamura(オーチャードホール以外のシアターコクーンなど)、同7月から中野サンプラザホール、2024年3月から川口総合文化センター・リリア、同7月から横須賀芸術劇場 (大劇場・リハ室)と東京国際フォーラムホールA(他ホールも順次)、同9月から東京芸術劇場、2025年2月から帝国劇場が改修や建て替えに入った。

 同4月からは神奈川県民ホール、同8月から紀尾井ホール、2026年6月から東京文化会館、2027年1月からサントリーホールでも始まる。

 筆者はこれらすべてのホールでライヴを観てきた。もうこの世にはいない音楽家の公演も多い。まぶたを閉じると、1つ1つのステージが今も鮮明によみがえる。脳のなかで音が鳴る。

 このうち、中野サンプラザホール、東京芸術劇場、紀尾井ホールは、日本音響家協会が「優良ホール100選」にセレクトしていた。同協会はアーティストや、ホールを設計するエンジニアによって組織されている。

 しばらくの間は、少ない会場を多くのアーティストで譲り合いながらショーを行わなくてはならない。関東圏ではすでに、今まで3公演やっていたアーティストは1公演に減らしたり、サイズの小さな会場に替えたりしている。

 心配なのはホールの数が減ることだけではない。それぞれが再開したとき、かつての良質な音でまた聴けるかどうかが気になる。建て替えや改修によって、ホールの音は変わる。よくなればいいが、逆になるリスクもなくはない。

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