M-1準優勝「バッテリィズ」快進撃のワケ 業界で評判になっているのは「アホ」ではなく「ツッコミ」の方

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プロも話術を絶賛

 一方、寺家はプロの芸人たちからもその話術を絶賛されている。「M-1」で見せた漫才でも、彼はエースに知識を教える側であるため、一言たりとも言葉のミスが許されないポジションにある。さらに、エースのズレた言動に対して、あきれながらも優しく説明を続けるという高度な演技を求められる。

 正確に言葉を発しつつ、自然体の芝居をするというのが、寺家の漫才師としての技術の真骨頂である。それこそがバッテリィズの漫才の根幹を支える要素となっている。寺家のテクニックがしっかりしているからこそ、エースの天然ボケが一層輝きを増すのである。

 バッテリィズというコンビ名は、彼らの実際の経歴に由来している。2人は草野球チームでピッチャーとキャッチャーのバッテリーを組んでいた経験がある。エースがピッチャー、寺家がキャッチャーを務めていた。

 フィールド全体を見渡しながら配球を組み立てる寺家の冷静な判断力が、漫才における的確なツッコミにも生かされていると言えるかもしれない。

 草野球とはいえ、彼らはかなり本格的に野球に取り組んできた。寺家のキャッチャーとしての役割は、現在の芸風にも大きく影響を与えている。寺家が全体の流れをコントロールし、エースを輝かせるという役割分担は、漫才のスタイルとも一致している。

 現在はどちらかと言うとエースのキャッチーなキャラクターに注目が集まっているが、時間が経つにつれて、職人的な技術を持つ寺家の評価も高まっていくことは間違いない。

 実際、芸人仲間や業界関係者の間ではすでに彼のツッコミの精度の高さが話題になっている。今後、彼らがさらに多くの番組で活躍していくにつれて、寺家のクレバーな部分が一般の視聴者にも広く認識されていくことだろう。

 現在、バッテリィズは大阪を拠点に活動しているが、4月からは東京進出することを発表している。大阪に拠点を置いている間は、全国ネットの番組に出演するためのスケジュール調整が難しく、関東圏の仕事の機会も限られていた。しかし、東京に拠点を移すことで、より多くの番組に出演できるようになり、チャンスが広がることになる。

「M-1」準優勝をきっかけにブレークして、すでにCM出演やバラエティ番組への出演が増えているバッテリィズが、今後どのような進化を遂げていくのか。彼らの活躍から目が離せない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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