テスラ株急落「マスク氏」は“ビジネスと政治”の板挟みで窮地…禁断分野の「削減」に着手で「トランプ氏との蜜月関係」は終焉間近か

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公約に真っ向から反する動きも

 マスク氏の債務削減の動きに遅れが出ていることも気がかりだ。DOGEは「1050億ドルの削減を達成した」と主張しているが、詳細な内訳はほとんど明らかになっておらず、その信憑性に疑問が投げかけられている。

 この事態を憂慮したからだろうか、マスク氏は3月10日、社会保障やメディケア(高齢者・障害者向け医療保険)などの給付プログラムが削減の主な対象との見解を示した。DOGEは金融専門家を社会保障庁に派遣し、実際の作業を開始しているが、この動きはトランプ氏の公約に真っ向から反するものだ。

 トランプ氏は昨年の大統領選で、社会保障やメディケアの削減はないと一貫して主張し続けた。これに手を付ければ、政権の支持率が低下することが確実視されているため、マスク氏の発言後もホワイトハウスは従来の主張を繰り返している。

 このように、トランプ氏とマスク氏との間にすきま風が吹き始めている。両者の蜜月関係が終焉を迎えるのは意外と早いのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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