テスラ株急落「マスク氏」は“ビジネスと政治”の板挟みで窮地…禁断分野の「削減」に着手で「トランプ氏との蜜月関係」は終焉間近か

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関税政策に泣きを入れたマスク氏

 3月10日、米電気自動車(EV)大手テスラの株価が急落した。CEOのイーロン・マスク氏は同日に行われたインタビューで、企業経営と公職の両立に苦労している状況を明かした。公職とは第2次トランプ政権の政府効率化省(DOGE)のことだ。昨年末からのテスラ株の下落は45%と、米大統領選以降の上昇は帳消しになっている。

 米国では連邦政府職員の大量リストラ、欧州では極右政党の擁護発言が反発を生み、テスラ車の不買運動が起きた。テスラのほかにも、宇宙企業のスペースXやSNSのXなど複数の企業を経営するマスク氏について、投資家の間ではDOGEとの兼職が企業で采配を振るう妨げになっているという懸念が広がっている。

 テスラは苦境に陥り、さらにはトランプ政権に要望書を提出する事態に追い込まれた。3月11日付の米通商代表部(USTR)宛の書簡で、米国の過去の関税措置が相手国によるEV関税引き上げを即座に引き起こしたと指摘。その報復関税が自社の業績に悪影響を及ぼすことから、貿易政策の慎重な検討を要請した。

 トランプ大統領の関税政策に最側近のマスク氏が泣きを入れた形だ。

マスク氏は「経験も実行力もない」

 企業経営を犠牲にしてまでトランプ政権に尽くすマスク氏だが、同氏を巡る評判は残念ながら芳しくない。

 CNNの世論調査(3月13日発表)によれば、マスク氏の評価はトランプ氏やバンス副大統領を下回っている。マスク氏に対する否定的な評価が53%だったのに対し、肯定的な評価は35%にとどまった。さらに60%以上が、マスク氏にはトランプ政権が推進する抜本的な連邦政府改革を実行する経験も実行力もないと評価している。

 マスク氏はDOGEの取り組みで削減されたコストの一部を、納税者に配当金5000ドル(約74万円)として還付する提案をしているが、米国民は雇用への悪影響の方を心配している。

 3月6日、米調査企業チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが発表した調査結果により、米企業や政府機関が2月に公表した人員削減計画が前月の4万9795人から大幅に増加し、合計で17万2017人に上ることがわかった。単月としては4年7カ月ぶりの高水準となった背景には、DOGEが主導する連邦政府職員の解雇があるという。

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