ネットオークションに「ファン垂涎のグッズ」が次々と…“コレクターの終活”だけじゃない“掘り出し物”が出回る意外な理由

国内 社会

  • ブックマーク

コレクションが処分されるくらいなら……

 1990年代には「開運!なんでも鑑定団」などのブームもあって、おもちゃのコレクターが増加したと言われている。その当時30~40代でコレクションを始めた人が、現在60~70代になっている。終活を考え始めてもおかしくない年齢だ。そのため、かずお氏は「今後も貴重なコレクションを手放すコレクターが増えるのでは」と推測する。

 コレクターがもっとも危惧するのは、死後、コレクションが捨てられてしまうことだ。これまで筆者が取材した例でも、遺族が価値をわからずに貴重な漫画単行本を資源ゴミに出してしまったり、ブリキの玩具をまとめて処分してしまったりする例があった。アニメーターの遺族が、原画やセル画をゴミに出してしまったケースもある。

 価値あるコレクションを十把一絡げで買い取る悪徳業者もなかにはいるようだが、それでも捨てられてしまうよりはマシだと思える。こうした事情があるため、熱心なコレクターほど、自分が元気なうちに終活を進めてしまうケースが増えているのかもしれない。捨てられてしまうくらいなら、コレクションの価値がわかる人に売り渡してしまおう、ということである。

コロナ禍の影響も少なくない

 先日、コレクターのT氏は、ある有名漫画家のサイン色紙をオークションで落札した。出品者とコメントでやりとりするなかで、コロナ禍で受け取った様々な支援金の返済が滞り、コレクションを売らざるを得ない状況になっているという実態を打ち明けられたという。

 以前、「デイリー新潮」ではコレクターズショップの「まんだらけ」に取材しているが、コロナ禍が始まった頃は買い取りが大忙しだったと語っていた。コレクションを形成していると、いざという時に売ってお金にできるのがメリットといえるが、本音では売りたくないという切実な思いが見え隠れする。T氏はこう説明する。

「終活をするのは70代などのコレクターかもしれませんが、40~50代のコレクターは生活苦で手放す例が多いと思います。私の周りのコレクター仲間の間でも、コロナ禍の後に借金の返済に困ってコレクションを売ってしまった人がいます。不況が続く限り、今後もそういった出品が続くでしょう。財力のある人は貴重な品物を入手できるまたとない機会かもしれませんが、複雑な気持ちになりますよね……」

 様々な事情はあるようだが、オークションやフリマサイトに出品される品物には、様々な人の思いが詰まっている。そういった思いを含めて大切にし、次世代へと引き継いでいくのがコレクターの矜持といえるかもしれない。

文・取材=宮原多可志

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。