「50年前は50人に1人だった乳がん、現在は9人に1人に」 専門家が指摘する早期発見方法とは

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「日本以外の先進国では死亡者数が減少傾向」

 発症者数も死亡者数もピークは30~40歳代と比較的若いのが「子宮頸がん」の特徴である。

 女性特有の病でありながら、死者数は国内で年間約3000人もおり、これは交通事故で亡くなる人より多い。しかも日本以外の先進国では死亡者数が減少傾向にあるのにもかかわらず、日本はむしろ増えていっているのだ。

「イギリスやオーストラリアなど、きちんと検診が実施できている国では、死者数は減少しています」

 と指摘するのは、横浜市立大学医学部産婦人科教授の宮城悦子氏だ。

「子宮頸がんの一番のリスクは“検診を受けたことがないこと”です。それほど検診が重要ながんなのです。基本的には、20歳代から2年に1回の細胞診の実施が全国の自治体へ推奨されています。細胞診は従来からある検査法で、子宮頚部や膣の粘膜を採取して、細胞の形に異常がないかを顕微鏡で確認します」

制度整備の過渡期

 それに加えて整備が進むのは、30歳以上60歳以下を推奨の対象とする「HPV検査単独法」である。

 HPVとは、ヒトパピローマウイルスの略称である。子宮頸がんの約95%はHPVの持続的感染に由来。性交渉によって感染するため、成人男女の大半は感染を経験したことがあるほど、身近な存在なのだ。

「HPV検査単独法は、がんとしては何の病気でもないけれど、HPVに感染している人を発見して、将来的に子宮頸がんになるリスクがあるかを調査し、HPV検査陽性、つまりリスクが高ければ1年ごとに経過を観察していこうという検診です」

 幸い陰性で現在のリスクが少なければ、検診は5年に1回で済むというメリットがある。

 とはいえ、日本の子宮頸がん検診は、制度整備の過渡期といえる。前述のとおり細胞診とHPV検査単独法は、対象年齢が異なる上に受診間隔も異なる。運用が複雑で実施する自治体も少ないのだ。

「実際に現時点でHPV検査単独法を行えるのは、全国で2桁にいくかいかないかの自治体しかなく、政令指定都市で最も規模が大きいのは横浜市なのです」

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