バリウムより胃カメラ? エックス線検査では見落としも! がん検診の部位別の最適解を専門家が徹底解説
「健康で元気なうちに一度は内視鏡検査を」
万が一、便潜血検査で陽性となった場合は精密検査へ移行する。一般的には「大腸内視鏡検査」、つまりは肛門からカメラ付きのチューブを腸管に入れて隅々まで確認。医師の技量にもよるが、がんの発見精度は9割超とされる。
ならば、最初から内視鏡検査を行う方が合理的では。そう思う向きもあるだろう。
かような疑問を近藤氏にぶつけると、
「大腸内視鏡検査は、体への負担が比較的大きいのです。内視鏡検査の当日は、朝食と昼食を抜いた上で、大量の下剤を飲み大腸の中をきれいにする必要があり、高齢の方であれば、過度な脱水で体調を崩してしまう危険性があります。加えて、ごくまれにですが内視鏡によって、腸管に穴を開けてしまうリスクを伴います」
もちろん便潜血検査で陽性となったら、精密検査としてとても有益な検査法ではあるのだ。
「大腸がんのリスクは40歳を超えると上がってきますから、できれば健康で元気なうちに一度は内視鏡検査を受けておくといいでしょう。大腸がんから身を守る上で大切なのは、ポリープの段階で病変を発見して切除すること。そのためには内視鏡検査が有効なのです」(同)
全てのポリープが、即がん化するわけではないが、米国の研究ではポリープを全て切除することで、大腸がんの罹患率を76%から90%抑制すると報告されているという。
また前出の西崎氏は、こうも言う。
「大腸がんは遺伝が影響するといわれていますので、家族に罹患者がいる場合は積極的に検査を受けることをお勧めします」
「消化器の専門医で、自分の胃がん検診をバリウム検査で行っている医師は、ほとんどいない」
早期発見で5年生存率は9割超にもかかわらず、「胃がん」は男女共にがん死因数上位5位の常連だ。
衛生環境の改善によってピロリ菌の感染者数は減少傾向にあるが、胃がん患者の9割以上はピロリ菌に感染している。菌の有無を検査で見つけて除菌することも重要だが、塩分の多い食生活を送る現代人は罹患リスクが高い。
それだけに必ず検診を受けておきたいが、悩ましいのは厚労省指針で二つの検査法が選択できるところ。実際どちらがお勧めなのか。
まず一つ目は、「胃部エックス線検査」、いわゆるバリウム検査。そして二つ目は胃カメラを用いる「胃内視鏡検査」である。
「消化器の専門医で、自分の胃がん検診をバリウム検査で行っている医師は、ほとんどいないと思います。少なくとも私の周囲には一人もいません」
そう明かすのは、消化器の専門医である前出の近藤氏。
「バリウム検査では、発泡剤を飲むため胃が膨らんで苦痛を伴い、エックス線検査である以上は医療被曝のリスクもあります。一方の胃カメラは、そうした苦痛やリスクもありませんし、胃の内部を仔細に観察できる。特殊な光をあてることで、がんを鮮明に観察することも可能です」
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