バリウムより胃カメラ? エックス線検査では見落としも! がん検診の部位別の最適解を専門家が徹底解説
「CT検査はレントゲン検査より、肺がん死亡率を20%ほど下げられる」という報告も
前出の西崎氏に聞いても、
「近年『喀痰検査』はハイリスク者のみですし、個人的にはエックス線検査だけでも不十分で、早期のがんは見つけにくいと思います。もともとエックス線検査は、昭和40~50年代に『結核予防法』に基づき導入されたものです。いわば結核を見つけるための検査だったものが、そのまま『肺がん検診』に引き継がれたというわけです」
それでは、いったいどうしたらいいのだろうか。
「人間ドックなどの任意型検診になりますが、CTを使えば3次元でがんを探せる分、発見率は上がると思います」(同)
実際レントゲンだけでは、2次元的にしか肺の実態を把握できないという。
再び近藤氏に聞くと、
「CTでは、3次元的に肺の断面画像を重ね合わせて検診するので、グッと見落としが減ります。アメリカの臨床研究では、CT検査はレントゲン検査より、肺がん死亡率を20%ほど下げられるとの報告もあるのです」
注意すべきなのは、検査機器の性質上、CTはレントゲンよりも医療被曝によるがんリスクが高まるという点である。
「たとえば30歳未満で乳がんリスクが高い家系の方の場合、CT検査を受診すると乳がんリスクが上昇してしまったという報告もあります。CTを受けることでがんになっては元も子もないので、リスクの高い方には積極的に推奨はできません。たばこを長年にわたり吸っており、ある程度の年齢になった方が、選択肢として取り入れるのはいいと思います」(同)
肺に慢性的な炎症が起きていると、がんの発症リスクは高まる。ゆえに、気管支炎などの持病を抱えていたり、仕事で粉塵やアスベストなどを長年吸い続けていた可能性があったりする方も一考の価値はあろう。
「1回の便潜血検査で大腸がんを指摘できる可能性は3割から6割弱」
肺がんと同じく男女共に気を付けたいのが「大腸がん」である。がんの部位別死因で女性は1位、男性2位。死亡者数が多いにもかかわらず、見落とされがちながんとされている。
厚労省の指針では40歳以上に年1回の「便潜血検査」、平たくいえば検便が推奨されている。
まず専用のスティックで便の表面をこすって検体を採取。そこに血が混じっていないか調べる。いたって単純明快に思える検査法だが、実は少々心もとない点があるというのだ。
前出・近藤氏によれば、
「大腸がんの場合、便が大腸を通る際、がんの病変と擦れて血が混じることがあります。それを調べるための検査ですが、『偽陽性』や『偽陰性』が出やすいことに注意が必要です。痔や腸の炎症で血が混じってしまうこともあれば、大腸がんを患っているのに血が混じらなかったりすることもあります」
実際、1回の便潜血検査で大腸がんを指摘できる可能性は3割から6割弱、2回、3回と繰り返して8割を超えるという具合だ。
「1回だけの検査では見逃してしまう可能性が高いので、便潜血検査は通常2回行います。他のがん検診も同様ですが、一度やって陽性が出なかったからといって安心するのではなく、継続的に受け続けることが重要です。そうすればがんが悪化した時に、いち早く気付くことができます」(同)
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