バリウムより胃カメラ? エックス線検査では見落としも! がん検診の部位別の最適解を専門家が徹底解説

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がん検診受診率の異常な低さ

【全2回(前編/後編)の前編】

 日本人の死因1位である「がん」は、年間約40万人もの命を奪っている。そんな天敵に打ち克つため、われわれの味方になってくれるのが「がん検診」だ。中でも早期発見が可能とされるのが「五大がん」。部位別の最適解をまとめた「丸分かりガイド」をお届けする。

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 日本人の3人に1人が「がん」で亡くなる時代――。世界でも類を見ない検査体制を誇りながら、わが国は先進国で「がんの死亡率」が最も高い。その理由にはさまざまな指摘があるが、識者が口をそろえるのは「がん検診」の受診率の異常な低さだ。

 自分は健康診断を毎年受けているから大丈夫。何年か前に人間ドックを受けたから問題ない。そんな人であっても油断大敵。「がん検診」を正しく受けるすべを知らなければ、早期発見に至らない場合もある。

「そもそもがんに限らず『検診』と『健診』の違いが分からない方が大勢おられると思います」

 とは、予防医療の専門医で、東海大学医学部教授の西崎泰弘氏だ。

「一般的に『健診』は『メタボ健診』のように将来の疾患リスクまで確認する検査です。一方『検診』は現存する疾患を診断する検査です。つまり『がん検診』とは基本的に、現在がんにかかっているかどうかを確認する目的で行われる検査といえます。早期にがんを見つけて対処できれば、亡くなる人を減らすことができる。ぜひ受けていただきたいです」

「至れり尽くせりの国なのに、肝心の受診率が伴わない」

 目下、日本では厚労省の指針に基づき自治体が住民を対象に行う「対策型検診」と、人間ドックなど個人が自分のがんリスクを下げるために受ける「任意型検診」に大別される。

 前者は検査費用に公的な補助金が適用されるため、自治体によっては無料または500~1500円といった少額で受けられる。

 むろん後者は原則全額自己負担という大きな違いがあるが、それだけではない。

 再び西崎氏に聞くと、

「自治体が行う検診で対象となるのは肺がん、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん。これらは検診を受けることで死亡率が下がる可能性が科学的に示されているものばかり。世界的にも公費で5種類ものがん検診をやる恵まれた国は日本くらいで、まさに至れり尽くせりの国なのに、肝心の受診率が伴いません」

「五大がん」の受診率は最も高い男性の「胃がん」でさえ53.7%(2022年)。全体でも半数程度なのだ。

「アメリカやイギリスでは乳がんや子宮頸がんの検診受診率が7割前後なのに対して、日本は4割台と低いままです」(同)

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