絶体絶命だった「アンジャッシュ渡部」が活動本格化 復帰を後押しした5組の「大物芸人」とは

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根底には愛がある

 その時期に東野に会った渡部は「お前、どえらい仕事の取り方してんな」と言われた。自分がこそこそやっていたことを見抜かれていたことに心底驚いたという。その頃から東野は渡部の計算高さに注目していた。

 不祥事の後、渡部が初めてメディアに姿を現したのは、ヤフーニュースでの東野との対談企画である。気まずい表情を浮かべて対談場所に姿を現した渡部は、要所要所で容赦ないイジリの洗礼を受けた。それは、対談を盛り上げて面白いものにしながらも、渡部のイメージを良くするプレゼンにもなっていた。

 もちろん、東野以外のメンバーも、イジリに関しては特別な才能を持っている。今どき、不祥事を起こした芸人に対して、不祥事そのものを単に話題に出すだけでは笑いなど起きない。そんなに生易しいものではないのだ。

 その点、彼らは、絶妙な切り口で渡部を追い込んで、笑いを生み出していった。気まずい空気を作ることなく、不祥事を丸ごと呑み込んでネタにして笑いに変えているようなところがあった。そういう芸人たちのサポートがあったからこそ、渡部は絶体絶命の窮地から這い上がることができたのだ。

 芸人のイジリは、表面上でどんなに残酷に見えても、その根底には愛がある。芸人同士の絆が最も強く感じられるのは、実はこういう場面においてなのだ。イジられる側が容赦なくボコボコにされているような場面で、実はやられている芸人が誰よりも感謝していたりする。ピンチになった芸人を最後に救うのは、ほかの芸人たちの愛しかないのである。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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