密漁の罰金はアワビやナマコの「60分の1」…高級魚の代名詞「海のダイヤ」の罰金額だけが低い意外な理由とは

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「1人1日1匹まで」

 こうした本マグロ釣りのルールは、国の常設機関である広域漁業調整委員会で協議の上、同委の指示として決定される。かつて規制がなかった本マグロ釣りだったが、国際的な漁業規制が叫ばれ、管理策が進んでいることを背景に、2019年からはレジャーの本マグロ釣りにも一定期間に上限を決め、釣って持ち帰る場合には水産庁へ報告を義務付けるなど、規制措置が導入された。

 このように本マグロ釣りのルールに違反した場合には、罰則が設けられている。ルール違反とは、(1)小型を釣って持ち帰った、(2)大型魚を釣って持ち帰ったのに報告しなかった、(3)釣り上げて2本以上持ち帰った、(4)禁止期間に本マグロを釣った、などである。

(3)については、釣り上げて持ち帰るのは「1人1日1匹まで」(2025年4月からは毎月1匹まで)となっているほか、(4)は1~3ヵ月ごとに5~7トンまでなど(4月からは毎月5トンまで)と設定された上限に達した時点で、キャッチ&リリースも含めて本マグロ釣りは禁止となるため、その期間に本マグロ釣りをしたら違反となる。

漁業管理は奏功、釣りもルール順守を

 違反がばれたらどうなるのか。通報などを含めて、違反が判明すれば広域漁業調整委員会の指示(遊漁ルール)に従わなかったとして、農林水産大臣から指示に従うよう命令が出される。この後、指示の有効期間である1年度以内(4月から2年度以内)に再度、違反行為が発覚した場合に、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることになる。

 ナマコの密漁のように、判決で(地裁から)罰金が言い渡された例はある。一方、水産庁によると、マグロ釣りについては一回目の違反が判明し、指示に従うよう農水大臣命令が出された例はあるものの、指示の期間内に2度目の違反が発覚し、罰金が科された例はいまのところないという。

 日本海・太平洋の本マグロについては、漁業管理が奏功し、今のところ資源状態は良好。漁業の漁獲枠は増加したほか、2025年度の釣りの上限も前年度より5割増しの60トンに増えた。ただ、釣りの場合は漁業のように実態がつかみにくく、規制策は今後も強化される見通しだ。従って罰金額が低いとはいえ、これからもマグロ釣りを楽しめるようにするには、ルールをきちんと守る必要がある。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)など。最新刊に『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)。

デイリー新潮編集部

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