密漁の罰金はアワビやナマコの「60分の1」…高級魚の代名詞「海のダイヤ」の罰金額だけが低い意外な理由とは

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組織的・計画的な密漁防止が狙い

 アワビ(大きさ関係なし)、ナマコ(同)、本マグロ(30キロ以上の大型)、シラスウナギ(13センチ以下)――。ここに挙げた4種類の魚介類を、一般の人がルールに反して海で捕った場合に科せられる罰金をご存じだろうか。4種類のうち3種類は3000万円以下の罰金。ところが、1種類だけ罰金が50万円以下で、しかも、2年間のうちに2度違反した場合と猶予がある。

 その1種類とは「海のダイヤ」と呼ばれる本マグロだ。他の3種類は、漁業法で捕ること自体が禁止されているため「1発アウト!」で、3年以下の懲役、または3000万円以下の罰金が科される。実際に昨年、ナマコの密漁で1200万円の罰金が、ある地裁から言い渡された例もある。【川本大吾/時事通信社水産部長】

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 なぜ、一般の人がアワビなどの3種類を捕ることが禁止されているのかと言うと、「(暴力団が関与するような)組織的・計画的な密漁が横行し、漁業に大きな被害をもたらしている」(水産庁)からだ。アワビ、シラスウナギは高値で売りさばかれ、ナマコはというと中国で乾燥ナマコが重宝されることから、輸出目的で密漁に及ぶケ-スが後を絶たないという。

 こうした密漁を減らすことを目的に、国は漁業法を改正してきた。2020年12月に施行された改正漁業法では、「特定水産動植物の採捕」に関する規定を新設。原則として、アワビやナマコを捕ることを禁止し、23年12月からはシラスウナギを追加。それぞれ「採捕した数量や場所に関わらず、個人的な消費を目的としたものであっても採捕は禁止」とし、違反者には3年以下の懲役または3000万円以下の罰金を科すことにした。

「遊漁」と呼ばれる海洋性のレジャー

 これに対し、一般の人が本マグロを捕ることは、ルールに違反しない限り認められている。そもそも、一般の釣り人が組織的・計画的に大型本マグロを捕るというのは現実的ではない。アワビやナマコのように海底に定着して生息しているわけではなく、大海原を回遊するのが本マグロだからだ。

 ポイントを探したり、ヒットしてからの「ファイト」にも、時間を要したりして目立ってしまうから骨が折れる。釣り上げてからも、高く売りさばくには、大間の漁師のように、船上で「血抜き」など鮮度維持の処理を施したり、陸揚げしても巨体をさばいたりしなければならないから、こっそり密漁とはいかないであろう。

 大型の本マグロを捕るのは、漁業を侵害しているように思われるが、魚は「遊漁」と呼ばれる海洋性のレジャーとして、マダイやカンパチ、カジキ釣りなどと同様に楽しめる。本マグロ釣りについては大型ならOK。30キロ未満の小型は、資源保護のために漁業でも規制があることから、遊漁については「採捕禁止」となっている。

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