維新が胸を張る「高校の授業料無償化」に税金の無駄遣いの声…お膝元「大阪」で名門府立高が定員割れの衝撃 専門家は「教育が“弱肉強食”を加速させかねない」

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岡山県でも“ショック”発生

「大阪府の吉村洋文知事は少子化を前提に『定員割れはいずれ来る道』、『高校を再編しながら高校の質を高める』と“寝屋川ショック”を正当化しました。日本維新の会で共同代表を務める前原誠司氏も東洋経済オンラインの解説動画に出演し、無償化で公立高が地盤沈下することを『それでいいじゃないかと思う』と肯定したのです」(同・記者)

 岡山県の動きも全国ニュースとして報じられた。県立の岡山朝日高校が定員割れとなったことも“ショック”を与えたのだ。

 こちらも1874年、明治7年に創立という伝統高。何より旧制の第六高等学校を源流に持つ筋金入りの名門校として全国的な知名度を誇る。

 OBは元首相の岸信介氏、参議院議長を務めた江田五月氏、映画監督の高畑勲氏……と錚々たる顔ぶれ。進学実績も東大、京大、阪大における“合格者ランキング”の常連校だ。定員割れの背景には中高一貫教育校や私立高の人気があるという。

 高校授業料の実質無償化には“劇薬”の側面があることを改めて思い知らされる。ならば専門家はどのように見ているのか、教育評論家の親野智可等氏に話を聞いた。

授業料無償化のデメリット

「高校授業料の実質無償化は、政策として妥当か広範な議論が起こりました。政治の視点から離れ、純粋な教育問題として捉え直しても、専門家でさえ意見の分かれる難しい問題です。メリットがあるのは事実で、経済的な理由で高校への進学を諦めざるを得なかった中学生に門戸を開くのは間違いないでしょう。高校を選ぶ選択肢が増えたわけです。しかしながら、もちろんデメリットも存在します」

 そもそも無償化は保護者にとって「本当に教育費の負担軽減となるのか」と親野氏は疑問視する。裕福な家庭なら、浮いた学費を塾や予備校に回すだろう。保護者の収入が高校生の教育環境を左右する傾向が、現在よりひどくなるかもしれない。

「日本の公立校は“富国強兵”を支えた歴史を持ちます。集団教育と規律を重んじ、“優秀な軍人や兵士”、“優秀な工場労働者”を育成しました。一方の私立校は宗教教育などを筆頭に理念を最初に掲げる学校運営を行ってきました。太平洋戦争などの紆余曲折を経て、戦後の日本で公立高校と私立高校のバランスが適切な状態になったことは間違いありません。独裁国家に私立校は存在しません。私立校は民主主義のバロメーターなのです。しかしながら授業料の無償化が私立と公立のバランスを壊し、私立高校だけにメリットをもたらし、公立高校の地盤沈下を招く危険性があるとなると、これは問題だと言わざるを得ません」(同・親野氏)

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