CD通販番組「音楽のある風景」が23年の歴史に幕… 1万円超の高額セットが売れ続けたワケ

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 BS放送の長寿通販番組として知られる「音楽のある風景」が、3月いっぱいで23年の歴史に幕を閉じることになった。タレントなどを起用して進行するにぎやかな通販番組と異なり、大手レコード会社が企画したCDセットの収録曲を風景映像と共に紹介していくスタイルで、特にシニア層から「異色の音楽番組」として人気が高かった。

 ***

「音楽のある風景」は2タイプの30分番組として制作されてきた。BS日テレ、BSフジ、BS朝日の3局は月曜から土曜日まで毎日4~5本(BS日テレは日曜日も)を、BS4K放送では、BS-TBSも加えた4局で月曜から金曜日に7~8本を放送。いずれも比較的電波料の安い、夜半過ぎから早朝の時間での放送である。

 放送関係者の間からは「音楽に特化した唯一の通販番組として定着していた」と評価されている。大手レコード会社であるユニバーサルミュージックが「特販商品」として制作したCDセットの販売を目的として放送されてきた。商品の内容は演歌から歌謡曲、フォーク・ロックからJ-POP、さらにはジャズやクラシックまで幅広い。

「誰もが知っていると思われる、懐かしの作品100作品前後をピックアップし、基本的にCD5枚組をワンセットとして商品化してきました。年間5、6タイトルほどを発売しています」

 と解説するのは、ユニバーサルミュージック開発本部制作編成グループ・マネジャーの勝裕あゆみ氏だ。

 これだけ多様なCDセットとなると、音源はユニバーサルミュージックだけでは足りない。実際、音源はソニー・ミュージックエンタテインメントやエイベックス、ワーナーミュージック・ジャパン、日本コロムビア、ビクターエンタテインメント、さらにはキングレコードや日本クラウン、フォーライフなど他メーカーと多岐に渡っている。各メーカーからの理解を得られるのが大変だったという。

「原盤権など、楽曲には多くの権利が発生するので、その一つ一つをクリアしなければ実現できませんからね。しかし、企画を説明していくうちに徐々に理解していただくようになりました」(同)。

 こうした協力の背景には、CDの売り上げの減少もあるのだろう。日本レコード協会によると、CDの生産金額は1998年の5,878億円をピークに減少の一途を辿り続け、2024年には1,402億円にまで落ち込んだ。一方、サブスクなど音楽配信は1,000億円にも迫る勢いで伸長し続けている。

「CDの売り上げが減少する中で、レコード各社にとっては、カタログ(既発作品)の活性化が新たなビジネスになってきた部分がある。そういう意味で『音楽のある風景』は、時代の流れに沿ったCD商品の通販番組だったといえます」(音楽関係者)

これまでの人気セットは

 セットの内容は毎月のユニバーサル内での企画会議で決定するそうだが「常に20~30タイトルの企画が上がる」(勝裕氏)そうで、個性的な商品を新作として発売していた。

 これまでの人気商品には「SONGS FOREVER 歌い継ぎたい日本の名曲」や「日本で流行った洋楽ヒット」「《決定版》世界のムード音楽」「魅惑の夜にラブソング」「おんな演歌 花爛漫~平成令和ヒット曲集」、さらに音楽評論家の富澤一誠氏が監修した「大人の歌謡曲 心ときめく青春ヒット曲集」といったものがある。いずれもセットで1万円前後の高額商品となっているのだが、

「富澤さんの『大人の歌謡曲』は、12年前に発売した商品ですが『我が良き友よ』(かまやつひろし)や『シクラメンのかほり』(布施明)、『太陽がくれた季節』(青い三角定規)などを収録しています。既に15万セットを超えるほどヒット商品になっています」(同)

「大人の歌謡曲」は5枚セットで10,980円。CDの売り上げが伸び悩む時代に、これほどの高額商品が売れる背景とは一体なんなのか。レコード関係者が言う。

「『音楽のある風景』で扱われる“特販商品”は、レコードショップなどでは買えない商品なので、スペシャル感を抱かせるのだと思います。また、日本人がフィジカルメディア(物理メディア)を好む国民性ということも要因の一つですね。ですから、こういった商品は聴く以上に、コレクションとして残しておきたいと思わせる魅力がある。最近の楽曲はもう聴けない、と嘆くシニア層は多く、彼らは『音楽のある風景』を観て古き良き時代の音楽を思い出し、口ずさむと同時に商品を手元に置きたくなるわけです。哀愁感でしょうね。しかも、番組では全曲を流さず、サビの部分だけを聴かせる構成というのも、購買欲をそそるテクニックです」

 国立社会保障人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、2024年の65歳以上は全人口のおよそ30%を占める。50歳以上を含めると51%にもなり、14~49歳の38%を大きく上回る。少子高齢化が進行する現状を鑑みても、「音楽のある風景」は時代に合った番組となっていたわけだ。

 商品監修者としても名前の挙がった富澤一誠氏は言う。

「通販番組と言いますが、映像と音楽を立体的に見せている究極の音楽情報番組だったと思う。番組も30分番組で2パターンが制作されている点もいい。そもそもデジタル化が進んでいると言っても、シニア層の中には不慣れな人も多いですからね。やはりCD商品の需要というのは一定数あるのです。しかも、購入者のほとんどはネットでの注文ではなくフリーダイヤルでの申し込みだと聞きますからね」

次ページ:25周年を目前に放送終了のなぜ

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。