若者と付き合うのは「カネと時間のムダ」なのか? 51歳の編集者が気づいた「まだ何者でもない彼らと付き合うことにこそ価値がある」

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「若者軽視」は長い目で見ると損

 私自身、呑兵衛の零細企業経営者であり、かつ、子供がいないということもあり、テキトーに生きているため、若者から誘われやすい。さらに、誘われたらホイホイその場に足を運ぶため若者と知り合う機会が多い。もっと言えば、メディア業界に携わっているので、メディア業への従事を希望する若者はその実態やら報酬について聞くために誘ってくる。そうしたことから若者との付き合いがこの20年ほど続いているが、「まだ何者でもない自分」が「何者かになった」後に会うと、本当に彼らは嬉しそうに接してくれる。

 まぁ、ここまでテキトーに生きている人間は滅多にいないため付き合いやすかっただけなのだと思うが、再会した際、彼らに、学生時代に私と会った時の思い出話を嬉しそうにされるとこちらも嬉しくなるものだ。

 先日も私の地元・唐津に若者が2人やってきた。広告会社の社員時代の同期が連れてきた2人で、私とは初対面だったのだが、すっかり話が盛り上がり、別れ際には名残惜しくて彼らとハグをするに至った。2人ともなかなか見どころがあり、今後、彼らは広告業界で活躍するだろう。

 そんな形で出会った人々との縁は大事にすべきである。打算というわけではないものの、見所がある若者は将来多額のカネを動かす存在になる可能性があるし、その仕事をこちらに回してくれるかもしれない。冒頭で紹介した私と同世代オッサンの「そいつの分をオレも支払うんだろ? しかも知識も含めてこちらが与えるだけだから意味がないからオレは行かない」という発言は長い目で見ると損をする。

 何しろ若者こそ将来の日本を担う存在だし、年老いた自分を引き上げてくれる存在になるかもしれないのだから。目先の出費をケチって将来の得を得ないのはむしろ損であろう。若者に対しては敬意をもって接し、彼らと良い関係を人生をかけて作るべきなのである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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