「高校野球には戦争、昭和の名残が」「資本家と労働者の階級格差はAI格差に」 五木寛之と古市憲寿が語る「昭和100年」

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一番良かったと思う時代は……

古市 今まで生きてこられた中で、五木さんが一番良かったなと思う時代って、いつですか。

五木 うーん、そうですねぇ……。やっぱり昭和。昭和27~28年からの10年間くらいかな。

古市 五木さんが九州から上京してきたときくらい。

五木 そうですね。今でいうオールドメディアも当時はニューメディアだった。いろんなものが新しく見えた時代ですから。

古市 今日より明日が良くなると思えた時代。

五木 うん。すごく活気があったと思う。大変だったけど、面白い時代だったと思いますね。昭和には戦争の時期もあったけど、それ一色ではなく、戦後の時代もあったわけですから。

古市 昭和20年で戦争は終わって、むしろそれ以降の方が長いですもんね。

五木 今は今で面白いと思って生きています。良くも悪くも昭和はまだ残ってる。昭和の人もたくさんいる。

古市 そうですね。やっぱり昭和はしばらく終わりそうにない。そういえば週刊新潮も昭和的な媒体ですけど、これから残りますかね。

五木 うーん……。一寸先は分からない時代ですから(笑)。

五木寛之(いつき ひろゆき)
1932年(昭和7年)、福岡県生まれ。47年に北朝鮮より引き揚げる。『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。ほか、『風の王国』『大河の一滴』、本誌連載をまとめた『こころは今日も旅をする』など著書多数。

古市憲寿(ふるいち のりとし)
1985年(昭和60年)生まれ。社会学者。日本大学芸術学部客員教授。若者の生態を描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注日され、メディアでも活躍。著書に『正義の味方が苦手です』(新潮新書)など。

週刊新潮 2025年2月27日号掲載

古市憲寿 誰の味方でもありません 拡大版 「特別対談 五木寛之×古市憲寿 昭和100年を語る」より

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