先が一向に読めない「出色のミステリー」 謎が謎を呼ぶ「御上先生」の結末を占う

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実は御上も熱血

 学園ドラマとミステリーを融合させたTBS「日曜劇場 御上先生」(日曜午後9時)の評判は高まるばかり。精緻を極めた脚本と出演陣の迫真の演技が観る側を引き寄せている。23日の最終回まで残り2回。これまでの物語を整理し、解説したい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「御上先生」の学園ドラマ部分のテーマは、正しい教育の必要性。文部科学省の部分では自分たちの使命を忘れた大人たちの愚かさが描かれている。ミステリーとしては出色の仕上がりで先が一向に読めない。

 主人公の御上孝(松坂桃李)は私立隣徳学院高校3年2組の担任教師。物言いはクールで、第2回で「スーパー熱血教師以外は教師にあらずという空気をつくってしまった」と言い、暗に同局「3年B組金八先生」(1979~2011年)の坂本金八(武田鉄矢)を批判した。

 しかし、気がつくと御上も生徒のために日々奔走している。やはり熱血漢なのだ。いつの時代も世間から愛される教師の必須条件は変わらないのだろう。

 もっとも、教えは清新だ。第1回、生徒たちにこう説いた。隣徳は東大進学者数が地域でトップの超進学校である。

「君たちは成績優秀だが。真のエリートではなく、ただの上級国民予備軍だ。エリートとは神に選ばれた人。なぜ神に選ばれる? それは普通の人間なら負けてしまう欲やエゴに打ち勝てる人だからだ」(御上)

 さらに御上は、エリートは弱者に寄り添える人だと付け加えた。感電自死したことが第6回に克明になった兄・御上宏太(新原泰佑)を意識したものだった。

 宏太は当時通っていた啓陵学園高が発達障害の生徒を進級面で差別し、それに社会も無関心であったことから、抗議自死した。

 御上は型破りだが、そもそも教師ではない。もとは文部科学省の官僚。天下り斡旋の疑いを掛けられたことから、左遷で隣徳に派遣となった。

 この件を生徒の1人で報道部の神崎拓斗(奥平大兼)が校内新聞で報じる。「御上先生は犯罪者」。御上は神崎にあえて追加取材させる。「僕には(天下り斡旋をやった)記憶が全くないんだよね」(御上)。誰かがウソの密告をしたのか。

 ハメられたとすると、政界と深く結びつき、御上ら部下を駒の1つとしか思っていない文科省局長の塚田幸村(及川光博)の仕業か。それとも同期の槙野恭介(岡田将生)に裏切られたのか。御上の左遷以降、2人は顔を合わせるたびにいがみ合っている。

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