元祖「ブログの女王」が愛犬との別れを“インスタ”で報告…「ブログが大いに盛り上がっていた時代」をネットニュース編集者が振り返る

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失われた存在感

 2000年代後半には一般人のブログを書籍化する動きが加速。能町みね子氏や「中国嫁日記」などはその代表格であろう。私もサイバーエージェントが設立したブログを書籍化する出版社「アメーバブックス」の広報担当を務めたが、同時にアメブロの人気ブログ『実録鬼嫁日記』の編集もした。2005年の新語・流行語大賞には「ブログ」が入り、著者のカズマ氏が表彰されたのである。

 その後も芸能人が次々とブログに参入し始め、若槻千夏、辻希美、上地雄輔らが絶大なる人気を誇るようになる。市川海老蔵らも参戦し、妻・小林麻央さんの闘病中は海老蔵と麻央さんのブログが連日のようにテレビのワイドショーに使われるようになった。不祥事を起こしたプロ野球選手のブログ等も引用され「この時彼はこのように精神的に不安定だったようです」のような分析をテレビでされたものである。

 しかし、2009年にツイッター(現X)が本格的に一般人にも使われるようになった。きっかけは水道橋博士と広瀬香美という著名人が使ったことにあるだろう。そこからツイッターが本格的に芸能人にも広がり、インスタグラムの登場もありブログは存在感を失っていく。

時代は移り変わるもの

 それから15年ほどが経過したが、昨今スポーツ新聞の電子版と、安いギャラのライターが中心の「コタツ記事メディア」はブログよりもX、インスタグラム、YouTubeでの発言をベースにコタツ記事を大量生産している。もちろんテレビとラジオの発言も頻繁に使われているが、ブログからの引用は明らかに減った。

「ブログの女王」と呼ばれた人物でさえ、大切な告知にブログを使わなくなったということが、ブログ黎明期にあの熱狂を見ていた人間としては少し寂しい。だが、時代は移り変わるものである。これが当たり前の姿だ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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