1人に90発の銃弾を撃ち込み、遺体は肉片に…金正恩が「脱北者」への刑罰を死刑に格上げ 処刑現場の凄惨すぎる光景
エリート層の脱北
韓国統一省によると、2023年に韓国入りした脱北者は196人で、年間で60人台だった2021年と2022年に比べて、およそ3倍も増えている。これは、金正恩総書記が2022年8月、新型コロナウイルスの「防疫大戦に勝利した」と宣言し、2020年から続けていた国境封鎖を解除したことが大きな理由だ。脱北者が国境を越えることが比較的容易になり、いったんは主に中国や東南アジア諸国に長期間潜伏し、支援者らの助けを借りて、条件が整った段階で韓国入りするケースが多い。
2023年の脱北者196人の脱北理由は「北の体制が嫌だから」(22.6%)が「食糧不足」(21.4%)をやや上回っている。「北の体制」については、具体的に「金正恩氏の世襲に疑問を感じた」と答えている。特に、196人のうち99人が20~30歳代で、若者層にこの傾向が強いようだ。20年の調査では「食糧不足」(22.8%)が「北の体制が嫌だから」(20.5%)より多かったことからも、このことがうかがえる。
また、特筆すべきは脱北者のうち外交官や海外駐在員、留学生らエリート層が10人に上り、ここ数年間では最多だったことだ。統一省当局者はエリート層の脱北者が増えたことについて、「最近、新型コロナの終息により本国(北朝鮮への)復帰が本格化するなか、(エリート層は)自由世界を経験していることから、復帰に大きな負担を感じたのではないか」と指摘している。
エリート層の脱北者は、父親の金正日氏の体制下に比べて2倍超に増えている。1997年7月に統計が始まって以来、故・金正日総書記が最高指導者の時代は14年間で54人だったが、2011年12月の死去後は2023年までの12年間で134人に達した。外部からの情報に日々接する立場にあるエリート層の間で、体制への批判がより強まっているようだ。
北朝鮮は昨年から、韓国を「第1の敵国、不変の主敵」とみなし、対決姿勢を先鋭化し、国内の引き締めを図っている。金正恩氏は北朝鮮の民衆が世襲体制や一党独裁体制への不満を高めることで脱北者が増加する一方、かつてのソ連・東欧諸国のように、国内で民主化運動などの反体制運動が激化し、体制の崩壊につながることを強く懸念し、引き締めに動いている。そのひとつが今年から脱北罪の量刑を最長懲役15年から死刑に定めたことといえそうだ。
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