1人に90発の銃弾を撃ち込み、遺体は肉片に…金正恩が「脱北者」への刑罰を死刑に格上げ 処刑現場の凄惨すぎる光景

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 北朝鮮では、これまで脱北を企てて逮捕された場合、その罰則は最長で懲役15年だったが、今年1月から銃殺刑を含む死刑に変更されていた。米国の北朝鮮研究者が筆者に明らかにした。韓国文化の流入で金正恩総書記による世襲制に疑問を抱く市民が増えているのに加え、経済状況が厳しく食糧難などが追い打ちをかけており、北朝鮮当局は体制崩壊を恐れ、見せしめのため、脱北者に対して死刑という極刑で臨んでいるとみられる。
【相馬勝/ジャーナリスト】

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死んでしまうだけ

 北朝鮮の東海岸に当たる黄海南道(「道」は県に相当)で今年2月20日、脱北しようとして逮捕された30歳代の男性3人が公開で銃殺された。

 3人は兄弟2人とその友人で、食糧事情が厳しく、昨年から配給が途絶えていることなどから、「もう、この国(北朝鮮)にいても、死んでしまうだけだ。いっそのこと、韓国に逃げよう」などと相談して、両親らにも黙って脱北を計画。何カ月も前から秘密裏に3人がようやく乗れるほどの木造船を作ったり、コンパスを買ったりするなどして、準備を進め、海岸に人の出入りが少ない今年1月6日午前零時ごろ、近くの海岸から船をこぎ出した。

 しかし、折あしく、海は霧が立ち込めて、前が見えない状態になった。それでもコンパスを頼りに韓国と思われる方向に漕ぎ進んでいたところ、大きな船の影が見えたので、韓国の漁船と思い「私たちは韓国に行きたい脱北者だ。助けてくれ」と叫んだところ、脱北を警戒中の北朝鮮当局の巡視艇だったため、ただちに逮捕されてしまった。

恐怖で気絶

 3人はその後、取り調べを受けたあと、裁判で「死刑」の判決を受け、2月20日に処刑場となった広場で市民が見守る中、銃殺されたという。

 米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」によると、この模様は「数日前、公開処刑を目撃した黄海南道の住民が平安南道新義州市に出張で来た際、知人である、同市在住のRFAの情報提供者に明らかにした」もの。「北朝鮮から逃げようとすれば、こうなるのではないか、と住民に恐怖を植え付けるため、公開銃殺された」と語っている。

 銃殺を決行した北朝鮮当局は、周辺地域の工場や農場、学校に、一人残らず決められた場所に集まるよう指示し、ほとんどの住民は何が起こっているのか分からずに集まり、凄惨な銃殺の現場を目撃することになった。

 この知人は「2月20日、公開処刑を行った道保安局(警察)、道検察庁の職員が、“この地に脱北者の遺体を埋葬する場所はない”と言い、一人一人に90発を撃つという野蛮な行為を行った」と述べた。彼ら3人の死体はボロボロになり、あたりに肉片が飛び散ったという。公開発砲の現場では、この模様を見ていた若い学生が恐怖で叫び、数十人の住民が気絶して意識を失ったという。

 今回の銃殺は脱北の罪の量刑が変更された後に、正式に死刑を執行された初めてのケースとみられる。

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